通潤橋にそっくり!? みやま市の高田濃施山公園にある水仙橋

勢いよく池の水を放出する水仙橋

記事 INDEX

  • スケールの違い以上に
  • 旧高田町の町花に由来
  • 子どもの"推し"ならば

 1枚の写真に思わず見入ってしまった――。通潤橋(熊本県山都町)のようだが、やはり何か違う……。写真に添えられた説明を見ると、福岡県みやま市にある高田濃施山(たかたのせやま)公園の水仙橋とある。有名な通潤橋の放水は休日などに1日1度だけ見られるようだが、こちらは毎日1時間ごとに水を放つという。さっそく訪ねてみた。

スケールの違い以上に


公園にある海方池では1時間に1度、噴水を楽しめる


 筑後平野が見渡せる小高い山にある公園は1995年に完成した。みずほPayPayドーム福岡(福岡市中央区)の約1.5倍の広さがあり、四季折々の花と木々に囲まれた公園の北側の入り口付近に水仙橋はある。


熊本県山都町の通潤橋


 国宝の通潤橋は、江戸時代末期(1854年)に建設されたアーチ形石造水路橋で、熊本地震や豪雨で被災しながら今も現役で活躍している。長さ約78メートル、幅6.6メートルで、約6キロ離れた笹原川の上流から水を引き、水路の総延長は30キロに及ぶ。


最高峰の技術をもつ石工集団が携わったとされる通潤橋


 一方の水仙橋。みやま市によると、橋の幅は通潤橋に近い5.5メートルだが、長さは36メートルと半分に満たない。熟練の肥後の石工や地元住民が総出で造った歴史、見事に積み上げられた石の威容――。スケールの違い以上に”本家"の風格は際立つ。


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旧高田町の町花に由来

 水仙橋が誕生した経緯を市や公園に尋ねてみたが、完成から30年を経ており、由来などを記した資料はなく、当時関わった人も現場を離れて分からないという。「おそらく町の新たなシンボルにしようとしたのでは」と担当者。水仙橋の名前にあるスイセンは、合併でみやま市になった旧高田町の町花に由来するらしい。


旧高田町の町花が名前の由来らしい


 通潤橋といえばまず思い浮かぶのが、勢いよく噴き出す水。初夏の農業用水の需要が高まる時期を前に、現在は休日を中心に13時から15分間ほど放たれる。こちらの公園では、隣接する海方池の水をくみ上げ、9時から16時まで1時間ごとに4分間ほど勢いよく水を出す。


水仙橋から放出された水は池へ注がれる


 元々は橋内部の水路にたまった土砂を取り除く目的で行われる通潤橋の放水。15分間で200~300トンの水が噴き出されるといわれている。一方、水仙橋は4分間で約10トンに設定されているそうだ。


水仙橋(上)と通潤橋の放水


 水仙橋は、時を知らせる園内の中心的な存在で、暑い季節には地元の子どもたちに人気の水遊びスポットでもある。放流直前に流れるアナウンスを聞いて水辺から間近に見ると、なかなかの迫力だ。


1回に約10トンの水を放つという水仙橋


子どもの"推し"ならば

 市民の憩いの場となっている公園は多彩な顔を持っている。坂道を上っていくと、市街地を見渡せる展望台にたどり着いた。野鳥のさえずりと、風に揺られる木の葉の音だけが聞こえてきた。


展望台からは筑後平野が見渡せた


 訪れたのは、小中学校が新学期に入った平日の午後。大きな複合遊具がある高台では誰とも会うことがなかった。ここからスタートする全長約100メートルのローラー滑り台は、県内最大級なのだという。


斜面に沿った全長100メートルの滑り台など多くの遊具がある


 心地よい春風に背中を押されるように、名物の滑り台に挑戦してみた。徐々に加速していくと、間近に迫る新緑がまるで体を包み込むように流れていく。


風を感じながら滑走


 園内には、6世紀頃に造られた横穴式石室の東濃施古墳がある。このほか、1人1回50円と格安のバーベキュー広場や、キャンプ場も併設されており、自然の中で存分に遊ぶことができる。


芝生広場にある東濃施古墳


 5月5日には、35回目を迎えるイベント「鯉恋来(こいこいこい)」が開催される。約150匹の鯉のぼりが泳ぐ水仙橋の周辺で、スケッチ大会やステージイベントなど様々な催しがあり、1年で最も盛り上がるそうだ。


海方池に映る水仙橋


 夏が近づくと、橋の下で水遊びする子どもたちの歓声が響くという。訪れた日も、学校帰りの女児が水に足を浸して涼を楽しんでいた。スケールや歴史では本家にかなわないけれど、子どもの"推し"で測れば、水仙橋に軍配が上がりそうだ。


水路で涼を楽しむ



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