磯崎新さんプリツカー賞受賞記念 お弟子さんに北九州市の磯崎建築を紹介してもらう
お金がない。空調もない。
――西日本総合展示場本館(1977年)ですね。海辺に立つコンベンションセンターで、様々なイベントが開かれています。屋根を支える支柱が船のマストをイメージしているそうです。
ここでは私が責任者を任されました。
――ついに! やったじゃないですか!
でもね、お金がなかった。支柱からワイヤを垂らして天井を支える構造が、もんのすごいお金がかかって。内装や外装にあまり工事費を向けられませんでした。当初は空調設備もなかったですから。※空調は1998年に設置。
――西日本総合展示場本館の隣には北九州国際会議場(1990年)があります。実写版の映画『ママレード・ボーイ』(2018年公開)のロケ地です。総合展示場本館とともに原作漫画にも登場しますね。
この色彩や形はまさにポスト・モダン建築です。磯崎建築は快晴の日がもっとも映えると思っています。館内には海の波をイメージした天井があります。大理石をぜいたくに使った柱など、バブル期だからこそできた建物でもありますね。
――どうして北九州市には磯崎建築が多いのでしょうか。
1967年から5期20年にわたって北九州市長を務めた谷伍平さんの存在が大きかったですね。磯崎さんは谷さんのことをパトロンだと言ってはばかりませんでした。公共事業では同じ建築家に何度も仕事を任せることはありません。癒着が疑われますから。谷さんは磯崎さんの実力を見抜いていたのかもしれません。磯崎さんも結果で谷さんの期待に応えました。
――西岡さんにとっても師匠のプリツカー賞は感慨深いですね。
磯崎さんの受賞は遅すぎたくらい。私もほっとしています。北九州には磯崎建築が今も大切に受け継がれ、そして市民に愛されています。これからも後世に守り伝えていってほしいです。
取材協力:北九州市MICE推進課