ドローンで見る磯崎新の世界 北九州市立美術館が動画を制作
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ドローンで撮影された北九州国際会議場(北九州市が作成した動画より)
記事 INDEX
- ランドマークを後世に
- 正方形や曲線で自在に
- 多くの人に見てほしい
北九州市は、多くの優れた建造物を手がけた建築家・磯崎新氏(1931~2022年)の功績を記録で残そうと、磯崎氏の手による6施設をドローンなどで撮影し、解説を添えた動画を制作しました。同市立美術館の特設サイトで1月から公開。老朽化などで姿を消す建物もある中、磯崎建築の美を動画で広く永く伝えていきたい考えです。
ランドマークを後世に
大分市生まれの磯崎氏は、1970年の大阪万博で「お祭り広場」の装置を担当。建築では「つくばセンタービル」(茨城県)や群馬県立近代美術館、米国のロサンゼルス現代美術館などを手がけました。
国内外での活躍が評価され、2019年に「建築界のノーベル賞」と称される米プリツカー建築賞を受賞したことでも知られています。一方で、地元の大分や福岡でも多くの建築物を残し、特徴的な外観で地域のランドマークとして親しまれています。
北九州市立美術館は、磯崎氏の「作品」を記録(アーカイブ)することで、その足跡を多くの市民や研究者らに見てもらい、後世に継承していこうと動画を企画。文化庁の補助を受けて制作しました。
正方形や曲線で自在に
撮影したのは、大分市のアートプラザ(旧大分県立大分図書館)と、北九州市の市立美術館、市立中央図書館・文学館、西日本総合展示場、北九州国際会議場の6施設です。24年9~11月の休館日などに撮影。外観から内部までの映像を、いずれも約3分の動画にまとめています。
アートプラザ(1966年完成)は、打ちっ放しのコンクリートの壁から、断面が正方形の梁(はり)が飛び出しています。北九州市立美術館(1974年完成)も、正方形の断面を持つ2本の直方体がせり出し、「丘の上の双眼鏡」として市民に親しまれています。動画では、そうした特徴的な外観を上空からも捉えており、各建築物が備える直線美に改めて気づかされます。
一方、市立中央図書館(1974年完成)は丸みを帯びた外観で、内部は天井のアーチ構造がむき出しに。カフェにも磯崎氏が考案した「モンロー曲線」が導入されています。併設された文学館(2006年改修開館)は、磯崎氏がデザインしたステンドグラスが館内を鮮やかに演出しています。
西日本総合展示場(1977年完成)と北九州国際会議場(1990年完成)は、いずれも海に近い立地から「水」がテーマ。総合展示場の屋根はさざ波を思わせ、国際会議場は大波のうねりのように見えます。また、屋内では、外光が差し込む天井を、水の中から見上げた水面に見立てていることも紹介しています。
多くの人に見てほしい
より多くの人に目にしてほしいと、6本の動画の一部をつないで約5分にまとめたものを、YouTube上でも公開しています。
なお、北九州市立美術館では、磯崎氏が九州で手がけた初期建築と活躍を支えた人物にスポットを当てた企画展「磯崎新の原点 九州における1960-70年代の仕事」を3月16日まで開催中。動画と合わせて、磯崎氏の偉業に触れてほしいとしています。
北九州市立美術館の三宅智美・普及課長は「すばらしい建築物として守っていきたい一方で、将来どうなるか分からない面もあります。今回の動画で今を記録でき、各施設から『いい映像ができた』と喜んでいただけて、ほっとしました」と話します。
公開後、地元の大学で建築を学ぶ学生らも閲覧しているそうです。動画に英訳がついていたり、サイト上の説明文は中国語変換もできる仕様になっていたりすることから、三宅課長は「海外の方にも、こうしたすばらしい建物を知っていただき、観光客誘致にもつながればうれしい」と期待しています。