磯崎新さんプリツカー賞受賞記念 お弟子さんに北九州市の磯崎建築を紹介してもらう

山頂に立つ北九州のランドマークは逆鱗に触れた思い出


北九州市立美術館 = 北九州市立美術館提供

――突き出た2本の直方体が特徴的な北九州市立美術館(1974年)は「丘の上の双眼鏡」と称されますが、最近はアニメ『機動戦士ガンダム』に登場する「ホワイトベース」に似ているという声も多いようです。こちらは映画『デスノート』(2006年公開)のロケ地ですね。美術館の思い出はありますか。

 磯崎さんが現場責任者にキレました。

――やっぱ怖い人ですよね……

 磯崎さんの意図とは違う施工がなされたんです。現場を訪れた磯崎さんが気づいて、担当していたアトリエの現場責任者に激怒しました。でも、足場とかも外しちゃってて、すでに手遅れでした。その記憶が強烈に残っています。

 でもね、しょうがない面もあったんです。当時は10人かそこいらの従業員しかいないのに、複数の大規模案件が重なって、むちゃくちゃ忙しかった。私も寝袋をもってアトリエでよく寝泊まりしていましたから。だから誰も責められません。ブラック? 今じゃ考えられないけど、そういう時代でしたね。


――まさに一心不乱って言葉がぴったり。

 こんなエピソードもあります。仕事で徹夜が決まった夜、磯崎さんが社員をとんかつ屋に連れて行ってくれました。そしたら三島由紀夫が書生とおぼしき男たちと一緒にいて、「あいつが三島だ」みたいにみんなでヒソヒソ話しながら食べたことがありました。楽しかったですよ。


この記事をシェアする