輸入頼りのバニラを国内で量産化 安定供給へ九州電力が挑む
九電が試験栽培しているバニラ(2025年12月、福岡県内で)
九州電力が、洋菓子の香り付けなどに使われるバニラの生産に乗り出すことがわかった。バニラは国内消費のほぼ全量を輸入に頼っており、国産品を安定的に流通させることができれば新たな収益源に育つ可能性があると判断した。すでに量産に向けて3件の技術的な特許も取得しており、高品質なバニラを生産して菓子業界などに販売することを目指す。
2027年以降に商品化へ!
九電によると、専門商社からメキシコ原産種の苗500本を購入して福岡県内のビニールハウスで2024年秋から試験栽培を進めており、25年には成長した木からバニラビーンズの生産にも成功した。量産に向けて今後、より収穫量が多く見込める苗の栽培作業を本格化させる考えで、27年以降の商品化を目指す。
バニラは主に熱帯で育つラン科のつる性植物で、開花時に授粉すると、インゲン豆のような「さや」ができて中に種子が実る。さやごと発酵、乾燥させる工程(キュアリング)などを経れば、市場に出回るバニラビーンズが生産できる。アフリカの島国マダガスカルやインドネシア、メキシコなどが産地として知られ、高級品の取引価格は1キロ・グラムあたり数万円に上るため「銀より高い」と表現されたこともある。
九電がバニラ生産に参入するのは、海外産地の天候不順や新興国の菓子需要増などで今後の輸入に影響が生じる可能性があるとみているためだ。実際にマダガスカルではサイクロンが直撃し、日本のバニラビーンズの輸入価格が1キロあたり6万円超と従来の10倍以上になったこともある。
効率化へ技術特許を取得
生産に挑む契機となったのは、九電の技術研究機関「総合研究所」の大熊康彦さんが、国産の希少さに着目して商機を見いだし、社内での新規事業創出に提案したことだった。
ただ、バニラの生産は時間と手間がかかるのが実情だ。バニラビーンズの生産に不可欠な授粉作業は年1回、花が開く数時間に合わせる必要があるほか、キュアリングにも技術力が求められるためだ。商用化に向けて大熊さんは生産を効率化する技術を開発しており、すでに特許を取得した。
具体的には、人手がかかる授粉作業を「誰でも簡単に、高い成功率で可能にする」(大熊さん)ためにピストル型の専用装置をつくったほか、特殊な薬液と電磁波を使ってさやの発酵を促す装置と、海外産地と気候が異なる日本でも効率的に熟成できる設備も考案した。
九電は過去に、イチゴの促成栽培技術を開発してスマート農業に参入した経験がある。バニラについては今後、具体的な販路などを詰めていく方針で、大熊さんは「菓子職人が安定してバニラを入手できるようになれば、香りで消費者を笑顔にできる」と意欲を見せている。
国産に商機、他業者も熱視線
バニラの国産化に挑む事業者はほかにもある。
長崎県大村市の「ヤマトバニラビーンズ」は約6年前から栽培しており、現在の収穫量は年100キロ・グラム規模に上る。農家に生まれた清水大和代表が、収穫したさやを天日干しする独自のドーム型設備を開発するなどしており、ホテルや飲食店などに販売している。清水さんは「今後は年間収穫量を1トンに増やしたい」と話す。
鹿児島県奄美市では、外交官の経歴を持つ林晋太郎さんが栽培を進めている。林さんは在タンザニア日本大使館に勤務した経験があり、農家支援事業でバニラ栽培を知った。現地の温暖な気候が出身地の奄美大島に似ていると感じ、2022年に帰郷して始めた。25年春に初めて開花したといい、林さんは「奄美産のバニラを発信していきたい」と意気込む。







