「ワンビル」開業から1年 天神の新たな交流と文化の起点に

「創造交差点」へ。開業1年を迎えたワンビル

記事 INDEX

  • 屋台みたいな感覚で
  • 「創造交差点」を掲げ
  • 一部店舗は苦戦も…

 西日本鉄道が福岡市・天神で再開発した「ワン・フクオカ・ビルディング(ワンビル)」が4月24日、開業から1年を迎えた。ホテルや賃貸オフィス、商業テナントに加えて新興企業などが集まるフロアを設けたことで多様な交流を生み出しており、今後も建て替えが相次ぐ天神地区で存在感を出し続けられるかが焦点となる。

屋台みたいな感覚で

 4月2日、ワンビル6階に開放空間として整備されたスカイロビーに数十人が集まり、桃山学院大学(大阪)の学生らが企業と連携して新規事業のアイデアを発表するイベントが開かれていた。毎週木曜に行われる「サーズデー・ギャザリング」で、ワンビルが開業した2025年4月から約50回開催され、延べ参加者数は約8500人に上る。テーマや登壇者は毎回変わり、海外からゲストを招くこともある。


毎週木曜にワンビルの「スカイロビー」で開かれている交流イベント(4月2日)


 にぎわいの起点となっているのは、起業支援を手がける米ケンブリッジ・イノベーション・センター(CIC)だ。同社は東京に次ぐ国内2か所目の拠点として、スカイロビーとつながっている7階にシェア(共有)オフィスなどを備えるCICフクオカを設けた。シェアオフィスの入居企業は新興企業を中心に135社(3月時点)となり、活発な交流が生まれている。


 CICフクオカの関連組織でディレクターを務める松尾雄介さんは「(知らない人同士が集う)屋台みたいな感覚で交流できる場所として、今後もイベントに多くの人を集めたい」と話し、CICフクオカの鳥越正則ゼネラル・マネジャーも「入居企業数を今後2倍に増やす」と意気込む。

「創造交差点」を掲げ

 地上19階・地下4階建てで高さ97メートルのワンビルは、西鉄の旧本社ビルだった福岡ビルや、「ギャルの聖地」と呼ばれた商業ビルの天神コアなど3棟を一体開発し、福岡市の再開発促進策「天神ビッグバン」を象徴する建物の一つとして誕生した。



 西鉄はビルの基本理念に「創造交差点」を掲げ、アート作品を館内の随所に展示しているほか、米ニューヨーク近代美術館(MoMa)のミュージアムストアを入れるなど、ビジネス面だけでなく文化面の充実も図る。18、19階には街の景観を楽しめるホテルを設けており、林田浩一社長は「様々な用途が混ざり合うことで、常に新しいビジネスや文化が生まれる場所を目指す」と狙いを語る。


 開業からの来館者数は25年12月に延べ1000万人に達し、3月末時点では1372万人を数える。単純比較はできないが、天神コアの18年度の来館者数(1700万人)は下回った。ただ、約130店に上る商業テナントの売り上げは高級ブランド店のシャネルや飲食店、化粧品店が引っ張る。訪日客による免税売り上げの割合も、開業時の15%から25%以上を占めるまで伸びているという。



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一部店舗は苦戦も…

 一方で、課題も見えてきた。天神地区ではかつて若年層向けの商業テナントが充実していたが、天神ビッグバンによる再開発で全体的にオフィスフロアの拡充や新設が目立っている。

 ワンビルでは天神地区で働く人が増えることを踏まえて「主な顧客層を30~50歳代に設定した」(西鉄)ことに加え、再開発前のビルと比べて商業面積を約6割に抑えた。結果として一部店舗では固定客の獲得に苦戦し、売り上げが想定を下回るところも出ている。

 西鉄は買い物客を呼び込もうと25年12月から、グループの商業施設による共通ポイント制度を開始。同じ天神地区の「ソラリアプラザ」を利用する若い世代にワンビルも訪れてもらい、底上げを図る。

 西鉄ワン・フクオカ・ビルディング部商業運営室の黄大圭・副室長は「スペースを活用して若年層を引きつけるイベントなどを多く企画してワンビルの認知度を高め、客層の幅を広げていきたい」と話している。

続く再開発 建設費は高騰

 福岡空港に近接する福岡市中心部は安全確保のため航空法でビルの高さが厳しく制限されており、天神地区では従来、おおむね60~70メートル台が限度だった。しかし、国家戦略特区の指定で2014年以降に順次緩和され、エリアによっては100メートル超のビルを建てることも可能になった。


大規模再開発が進む福岡市・天神地区周辺(3月2日、読売ヘリから)=中司雅信撮影


 実際、ワンビルが開業して2か月後の25年6月に福岡地所と住友生命保険が完成させたオフィスビルは高さ113メートル(地上24階・地下2階建て)で、現状では一帯で最も高い。ほかにも、三菱地所は27年中に、ホテルやオフィスなどが入る高さ91メートル(地上21階・地下4階建て)の再開発ビルを開業する計画だ。


 市によると、天神ビッグバンによって30年代までに大小合わせて約120棟のビルが建て替わる見通しで、25年3月末時点で74棟が完成している。ただ、事業者には建設費の高騰などが重しとなってきており、一部では「延期する計画も出ている」(不動産関係者)とされる。


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