海からの贈り物を観察 「ビーチコーミング」で夏の思い出を
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記事 INDEX
- 環境問題考える機会に
- 貝殻や流木で小物作り
- 漂着物を学ぶ案内本も
海のレジャーが盛んな夏は、砂浜に打ち上げられた漂着物を観察する「ビーチコーミング」にもぴったりの季節だ。環境問題を考えるきっかけになり、収集した貝殻などを使った工作で思い出づくりをするのも楽しい。
環境問題考える機会に
ビーチコーミングは、砂浜をくし(コーム)でとくように細かく観察して、漂着物を集めたり工作に利用したりする活動だ。
7月上旬、福岡市中央区の福浜海岸を、同市の一般社団法人「ふくおかFUN」代表理事の大神弘太朗さん(38)と一緒に歩いた。砂浜には、貝殻や海藻、木くずなどに交じって、プラスチックの破片がたくさん落ちていた。
博多湾は、外海とつながる湾口が狭く、閉鎖的な海域という。大神さんは「湾内の浜にあるプラごみの多くは、県内の道路などに落ちていたものが、排水溝から川を下って流れ着いたとみられます」と説明した。
同法人は、博多湾一帯の環境保全活動に取り組む。子どもへの環境教育にも力を入れており、湾内の生き物の多様さを伝えながら、プラごみなどの増加の影響も訴えている。
楽しみながら環境問題を考えてもらおうと、プラスチックのかけらを拾い集めて万華鏡を作るイベントを開催。8月27日にも同市東区の志賀島ビジターセンターで開く予定で、「環境問題が身近であることに気づいてもらえたらうれしい」と力を込める。
貝殻や流木で小物作り
貝殻や流木などの漂着物を使ってオリジナルの小物を作るのも楽しい。
同市東区の市海の中道青少年海の家は、近くの砂浜で二枚貝のサルボウガイや巻き貝のツメタガイなど様々な形の貝殻が50種類ほど見られる。施設では、貝殻などで飾ったフォトフレーム作りや、紙皿に貝殻などを貼り付けて絵を描く「貝皿クラフト」に取り組める。貝殻などを組み合わせ、「恐竜」などの工作に挑戦してもいい(いずれも有料で要予約)。所長の安部倫太朗さん(56)は「夏休み期間中は家族連れの来所も多い。自然の物の感触を楽しんでほしい」とほほえむ。
海を漂う瓶などのかけらが長い時間をかけて波にもまれ、角のとれたガラス片を「シーグラス」と呼ぶ。独特の美しい色合いに愛好家も多い。
福岡県糸島市のアクセサリー作家林真弓さん(41)は、市内の海岸で拾ったシーグラスを使ってイヤリングやブレスレットなどを作っており、県内で開かれるマルシェなどで販売している。
小中学生の娘2人とゴミ拾いも兼ねて探しており、拾ったシーグラスの角が少ないと「長い間、海を漂っていたのかな」と思いを巡らし、珍しい緑色や赤色のガラスを見つけると「異国から流れてきたのだろうか」と想像するそうだ。林さんは「同じ形のシーグラスは一つもないのが魅力です」と話す。
【注意】
※海岸には毒を持つ生き物の死骸や液体の入った容器が落ちていることもある。危険なものや不審なものにはむやみに触らない。
漂着物を学ぶ案内本も
元古賀市立歴史資料館長の石井忠さん(2016年、78歳で死去)が出版した「ビーチコーミングをはじめよう〈海辺の漂着物さがし〉」(図書出版木星舎)は、海辺で見つかる陶磁器のかけらやヤシの実などの漂着物が、どんなことを語りかけているかをわかりやすく案内する本だ。
石井さんは海の近くで暮らすうちに漂流物に関心を持ち、生前は自宅に私設博物館を設けた。研究者や愛好家らで構成する「漂着物学会」(01年設立)の初代会長も務めた。本には「ゴミと思っていたものが、角度を変えてみると、歴史や民俗をはじめ、さまざまなものが見えてくる」とつづっている。
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