バーでホテルで公園で はじめての本に出会える「読書」の秋

ワイングラスを傾けながら本を読む男性客と神保さん(左)

記事 INDEX

  • お酒を楽しみながら
  • ”オススメ”を客室に
  • 遊び場に小さな本棚

 「読書の秋」がやってきた。書架に並ぶ本を片手にお酒が飲めるブックバーや、客室で新しい本と出会えるホテルなど、読書を存分に楽しめるスポットが福岡県内の各地に誕生している。

お酒を楽しみながら

 9月9日、北九州市八幡西区のブックバー「古書と酒の店 神保堂」で、常連客の小倉隆二さん(65)が赤ワインを飲みながら、店内で見つけた詩集をめくっていた。「コーヒーを飲めるブックカフェは多いけれど、お酒を飲める場所はあまりない。いい気分で本と出会えます」と笑顔を見せた。

 同店は2019年オープン。詩や短歌、俳句などを中心に、2000~3000冊をそろえる古書店にバーを併設、バーの客は自由に本を手にすることができる。


「古書と酒の店 神保堂」の入り口


 マスターの神保茂さん(48)は大学時代から文芸サークルで活動し、その後も趣味で詩の朗読会などを開いていた。書店とは無関係の仕事に就いていたが、退職後、自身がお酒が好きなこともあり、「詩や俳句が好きな人が集まれるお店になれば」と開店した。


 本に水滴がつかないよう、ビールなど冷えた飲み物は断熱性のあるタンブラーで提供。バーには珍しく、カウンター席の手元に光が差すように照明を設置している。提供する飲み物にもこだわり、「晴耕雨読」という名の焼酎や、詩人の中原中也にちなんだ日本酒「中也の里」が並ぶ。

 神保さんは「お酒を飲みながら背表紙を眺めるだけというのも、いいものです」と語る。


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”オススメ”を客室に

 福岡市博多区のホテル「BUNSHODO HOTEL」は、宿泊客らから寄付された本を客室やロビーに用意している。小説や写真集、外国語の本など様々で、館内にある400冊以上の本全てに、寄付者が感想や本を贈った思いなどを手書きしたカードが付いている。九州の書店主10人おすすめの本を客室に用意する宿泊プランもある。


寄付された本を客室に用意するホテル

 戦前まで「文照堂」という書店があり、その後は雑居ビルが立っていた。ビルを建て替えてホテルにする際、歴史を受け継ぐ形にしようと20年に開業した。


ホテルのロビーに並ぶ本。寄付者の思いをつづったカードが添えられている

 副支配人の木村里緒さん(26)は「誰かのお気に入りの本や読んだことのない本を、思い思いに楽しんでほしい」と話す。

遊び場に小さな本棚

 大野城市では、市内2か所の公園に小さな本棚が設けられ、自由に読むことができる。大町公園には、あずま屋に「大町文庫」と看板を掲げ、絵本や伝記など130冊ほどを置いている。気軽に立ち寄ってもらおうと、数年前に市公園街路課が設置した。


公園に設置された大町文庫

 ふるかわ公園には、刺しゅうの図案集や料理本など大人向けのものも合わせて約50冊を置いている。本は市内の図書館から譲り受け、年に数回入れ替えているという。


大町文庫の小さな本棚

■イベントも開催

 在日フランス大使館は、フランス文学に興味を持ってもらおうと「フランス読書の秋」を全国で開催しており、福岡県内では10、11月、北九州市と福岡市にフランス人の絵本イラストレーターや若手漫画家を招き、ワークショップや講演会を行う。

 北九州市のJR小倉駅ビル内では10月12~27日、古本の販売を行う「小倉駅ナカ本の市」が開かれる。県内外の古書店やレコード店など12団体が出店し、小説や漫画、郷土史など計4万冊以上が並ぶ予定。

 同市の「古本や檸檬(れもん)」が中心になり、春と秋の2回開催している。同店店主の村田もも子さん(47)は「古本との出会いは一期一会。線引きや書き込みなど前の持ち主の痕跡が残っているのも面白いですよ」と来場を呼びかける。

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