グランドオープンから30周年を迎えた「門司港レトロ地区」(北九州市門司区)について、北九州市が5月22日、活性化に向けて今年度に取り組む事業を発表した。同地区の中心部に位置しながら未活用の状態が続く市所有の「旧JR九州本社ビル」は、ホテルなどの観光施設として再生するため民間事業者に売却する。対岸の山口県下関市と連携したイベントなども予定している。
旧JR九州本社ビル 観光施設に再生へ
ビルの売却に向けては、市が6月に事業者を公募し、10月に優先交渉権者を決定する。観光振興やにぎわい創出を促す施設とすることが条件で、市側は主にホテル経営を想定している。
JR門司港駅前に立つ同ビルは、鉄筋コンクリート造りの地上6階、地下1階建て。1937年(昭和12年)に完成し、縦長の窓などで垂直性を強調した近代的な米国式オフィスビルの特徴を備える。文化庁が認定する日本遺産「関門“ノスタルジック”海峡」の構成文化財の一つにもなっている。
事業者は外観の保存を前提に市から建物と土地を購入し、改修などを行う。市は2~3年後の開業を想定し、取得費用を含めた事業規模を数十億円と見込む。
2度目の挑戦
同ビルの民間活用を巡っては、2019年の公募で選ばれた事業者がホテル経営を計画したものの、コロナ禍などで資金難に陥って23年に断念した経緯があり、民間による活用を目指す取り組みは2度目となる。
武内和久市長は22日の定例記者会見で「とてもいい場所にあり、趣があり、非常にポテンシャル(可能性)のある建物。ホテルを誘致してほしいという地元の声も多く、お応えできる形になれば」と期待した。
下関市との連携イベントも
市によると、23年の門司港レトロ地区の観光者数は約212万人。市は、さらなるにぎわい創出に向け、門司港のノーフォーク広場に新設する九州最北端の記念碑と、下関市・毘沙ノ鼻(びしゃのはな)にある本州最西端の記念碑を両方訪れた人に記念証を渡すイベントを実施。国内外のドラマ撮影の誘致や歴史スポットを巡る謎解きゲーム、倉庫群を使ったアートプロジェクトなどの事業を予定している。