「おじさん」ってかわいい! 門司港の新名物「おじ焼き」が誕生

かわいらしい焼きたての「おじ焼き」

記事 INDEX

  • 笑顔で魅力を発信!
  • モデルを訪ねると…
  • 新たな”顔”も登場?

 にっこり下がった目尻、ふっくらした頬にはほうれい線――。北九州市門司区栄町の商店街に、近所の「おじさん」をモデルにしたスイーツ「おじ焼き」が誕生しました。門司港の魅力を発信する“顔”として、地元の若者らが考えた新名物です。

笑顔で魅力を発信!

 おじ焼きは、たい焼きのような菓子で、生地の表面には地元に実在する男性の顔が描かれています。製造・販売するのは、門司港レトロそばの商店街「栄町銀天街」にある「MOJiOJi(もじおじ)」です。和菓子店を改装し、3月にオープンしました。近くでゲストハウス事業などを行っている合同会社「ポルト」が運営しています。


おじ焼きを販売する「MOJiOJi」

 バナナのたたき売りや焼きカレーなどに続く門司の名物を模索していた同社は、地元に気さくで面白いおじさんが大勢いることに着目。彼らをかわいらしい菓子にすれば、地域の魅力を発信できると考え、商品化に向けて動き出しました。

 「門司のおじさんたちは、行動や言葉に地元の文化や歴史が根付き、港町ならではのおおらかさと男気を感じる」。同社代表を務める菊池勇太さん(34)は言います。


手のひらサイズのおじ焼き

 商店街を訪ねて店頭で注文すると、共同代表の井上夏樹さん(34)が焼きたてのおじ焼き(1個、税込み300円)を差し出してくれました。「生地にバターを使っているので、洋菓子のようなさくっとした軽い食感です」

 味は2種類あり、北海道産小豆で作った甘さ控えめの「つぶあん」と、レモンの爽やかな香りがする「カスタード」をテイクアウトできます。


 顔のイラストは、福岡県内で活動するデザイナー・児玉和音さん(29)が担当しました。調理場には児玉さんのデザインをもとに作られた型があり、店員が生地を流し込んで焼いていきます。店内では、缶バッジや巾着といったグッズも販売しており、今後は羊羹(ようかん)や最中(もなか)などの商品化も予定しているそうです。


接客する井上さん(右)

 商店街を通る家族連れやカップルが「何が売られているのか」と、興味津々で店をのぞきにやって来ます。若い女性客が「モデルはいるんですか?」と尋ねると、井上さんが答えました。「はい。近くに判子屋さんがあって、そこにいますよ」


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モデルを訪ねると…


「MOJiOJi」の前でおじ焼きを手にする菊池正幸さん。似ていると話題

 商店街から200メートルほど歩くと、目指す店「菊池印章堂」に着きました。いよいよモデルの菊池正幸さん(75)と”ご対面”です。「甘くておいしいよね」と言いながら目の前に現れた笑顔は、「おじ焼き」の顔そのままでした。

 ポルト代表の菊池さんの父親で、この道60年の印鑑職人。認印や実印、社印などを作り続け、「北九州で今も手彫りをしているのは、もう私だけ」と話します。


 名字など2文字の印鑑だと3~4時間で製作するそうです。何種類もある道具を丁寧に使い分け、小さな文字を正確に彫り込んでいきます。店の奥では活版印刷も行っており、「今の人には珍しいでしょ」と工房を見せてくれました。


 正幸さんがモデルの依頼を受けたのは昨年の秋頃。日課のラジオ体操を終えた後、息子や仲間たちからおじ焼きのアイデアを聞かされたそうです。「突然『お父さんを焼かせてください』って言われて驚いたけど、今の若い人たちの発想は面白いなぁ」と、商店街でスタートした若手の取り組みを応援しています。

新たな”顔”も登場?

 北九州市によると、同市の人口に占める65歳以上の比率は31.2%(2022年1月時点)と、全国の政令市で最も高齢化が進んでいます。そして、市内7区で高齢化率が一番高いのが門司区だといいます。


「MOJiOJi」が店を構える栄町銀天街

 門司の商店街では、経営者の高齢化や後継者不足で空き店舗が増える一方です。ポルト代表の菊池さんは「閉じたシャッターを開けて、何か面白いことを企画したかった」と、おじ焼きのプロジェクトが始まった経緯を語ります。

 MOJiOJiが営業する場所もかつては「松栄堂」という地元の和菓子店でした。「まちの形は変わっていくだろうけど、思い出や文化として根付いたものを少しでも守りたい」と、古い看板はあえて残しています。


「松栄堂」の看板が残る「MOJiOJi」。興味津々で客が訪れる

 「門司港は面白くて陽気な人ばかり。まだまだ“イケおじ”(=イケてるおじさん)はたくさんいます」と話す菊池さん。おじ焼きの顔のバリエーションを増やそうと、新たにモデルを引き受けてくれるおじさんと交渉中だといい、販売が伸びれば高齢者の雇用にもつながるのでは――と考えを巡らせています。

 「付加価値を生んで、地元をもっと元気に明るくしたい」。栄町銀天街でこれから生まれる新商品に期待です。

「MOJiOJi」
所在地:北九州市門司区栄町3-16
電話:080-6414-5416
時間:11:00~17:00
営業日の詳細はインスタグラム



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