【大分】共同温泉の「作法」を知ってね 別府市がポスター

 全国一の湧出量と源泉数を誇る泉都・大分県別府市が今春、住民や観光客らが集う共同温泉を利用する際の「作法」をまとめたポスターを作成し、周知を始めた。市には「知らずに注意を受けた」「ルールを守って」などの相談が長年寄せられており作成、解決に動いた。担当者は「評判は上々。誰もが気持ちよく利用できる環境にしたい」と話す。

浴槽の縁に座らない、水を足さない


「入浴作法」の要点がまとめられた別府市のポスター


 「湯船の縁に座っていたら、『そこに座るな』とお年寄りにいきなり怒られ、戸惑った」。同市の大学講師(48)は、転居してきたばかりの4年前を振り返る。熱い湯につかった後、体を冷ましていたところ、注意されたという。


 浴槽の縁に座ってはいけない、勝手に水を足してはいけない、髪の毛を湯につけてはいけない――。市内の共同温泉には「独特のルール」が存在する。縁は頭を置くところで、水を入れたら温泉の成分が薄まり、髪の毛は衛生上、問題がある。それぞれに理由があり、住民たちは守ってきた。

要点を1枚に集約

 こうした中、市が「別府流・入浴の作法」と題したポスターを手がけた。「あいさつをする」「タオルを湯につけない」など六つのルールを写真付きで紹介。「大切なのは気遣う心。素敵な温泉時間を過ごしましょう」と呼びかける。


地元住民らが利用する共同温泉(別府市で)

 きっかけは、市への相談。市温泉課には毎年30件以上、共同温泉に関する相談が寄せられる。「水を入れたら地元の人に怒られた」という観光客の訴えがあれば、「ルールを知らない人がいて、気持ちよく入れなかった」という住民の声もある。

 施設側はこれまで、トラブルの度に個別の貼り紙で注意を促してきた。だが、目立った効果はなく、枚数だけが増えた。市は4月下旬にポスターを作成し、市内の施設に配布。同課の矢野義明さんは「要点を1枚に集約することで読みやすくした」と説明する。

周知「助かる」と好反応

 掲示されてから約1か月。施設には、利用者から「周知してもらえて助かる」などの声が相次ぐ。大学講師も「温泉で嫌な思いをしないためにも、よい取り組みだ」と評価する。


浴場の入り口に貼られたポスター

 約2800の源泉がある別府市は湧出量が毎分約10万リットルで、源泉数、湧出量ともに日本一という。矢野さんは「共同温泉は市民生活に温泉が根ざしていることが分かる別府の象徴。後世に残していきたい」と話す。

 一方、新型コロナウイルスの影響も小さくなり、海外からの観光客も増加。市営温泉の指定管理者は、英語字幕を加えた入浴時のマナーを解説した動画も作成。市温泉課のインスタグラムでも公開している。


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