【大分】「自分に正直に」在米のキャバレー歌手が大分公演

 福岡市出身で米国在住のキャバレーシンガーが約20年にわたり、各地で観客に笑いと涙を届けている。トシ・カプチーノ(本名・平野利光)さん(62)。ゲイ(男性同性愛者)として生きづらさを感じた古里からニューヨークに移住した後、プロになって開催した公演の回数は150回を超えた。「自分に正直に生きる大切さを感じ取ってほしい」。2月に始まった日本ツアーのトリを飾る4月の大分公演を前に、期待を込める。


自由の女神をモチーフにした衣装姿で熱唱するトシさん


笑いと涙を届ける


 〽お母さん、ごめんね。孫の顔を見せられんで。(中略)親不孝な子を許して――。3月3日、福岡市中央区のライブハウス。トシさんが母親(89)への複雑な胸の内を表現した自作曲を披露すると、観客の涙を誘った。曲と曲の合間にはユーモアを交えた博多弁で軽妙なトークも繰り出し、会場を沸かせた。

 幼い頃から歌が好きで、高校2年生でオーディション番組「スター誕生!」に出場した経験もある。男性に恋愛感情を抱き始めたのは中学生の頃。親にも友人にも打ち明けられず、「自殺を考えたこともあり、ずっと苦しんだ」。

 高校卒業後、上京してナイトクラブで歌ってはいたが、性的嗜好(しこう)が公になるのを恐れる日々を過ごした。居場所を見つけられず、「精神的に限界だった」と振り返る。


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生きづらさ感じ…


ニューヨークを拠点井活動している


 31歳の時、旅行でニューヨークに2週間滞在した。「こんなに自分に正直に生きられる場所がある」。そう実感し、1995年に渡米した。ゲイに寛容だった地域柄はまさに天国だった。


 約10年間は、日系の演劇会社などで裏方の仕事をして生計を立てた。次第に、舞台で生き生きとしているゲイのダンサーや歌手の姿に触発され、一時は封印した歌手の夢を再び追った。

 2004年にデビューし、オペラの発声法を学んだり、ブロードウェーで観劇したりして研究し、自身のスタイルを確立した。米国人男性パートナーの後押しも受け、ニューヨークを拠点に、カナダ、ブラジルなどでも公演を続けている。

 コロナ禍が落ち着いても、物価高などが続き、芸能界を巡る環境は厳しい。それでも、「最後のショーになるかもしれない」との覚悟で舞台に立ち続ける。

日本ツアー締めに

 日本ツアーのテーマは「まるごとニューヨーク」。4月27日の大分公演では、昭和歌謡や現地で培った感性で生み出したオリジナル曲など約20曲を披露する。トシさんは「自分は今が旬。還暦を過ぎても楽しんでいる姿を見て、笑顔で帰ってもらえたら」と話している。

 会場はブリック・ブロック(大分市生石5)で、午後3時開演。問い合わせはTKOエンターテインメント(090ー8101ー6907)へ。


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