【熊本】被災越え、人吉「一富士旅館」が11月8日オープン

 2020年の九州豪雨で被災した熊本県人吉市の老舗旅館「一富士旅館」が、市中心部の九日町から約4キロ離れた赤池原町に移り、11月8日にグランドオープンする。人吉温泉観光協会によると、豪雨では市内の26宿泊施設が被災したが、同館の完成で廃業した場所を除く市内すべての宿泊施設の復旧が終わったことになる。

「一からやり直そう」と再起

 大正時代の終わり頃に創業したという同館は、木造2階建ての町屋旅館として営業。周辺の温泉を巡る宿泊プランや、レストランで提供する食事などが人気を集めていた。


再建した旅館の客室を紹介する松田さん

 豪雨では、近くを流れる球磨川が氾濫し、約4.5メートル浸水。従業員や家族は無事だったが、建物は大きく壊れ、休業を余儀なくされた。4代目女将の松田淳子さん(69)は「庭続きだった自宅も浸水し、汚れた手を拭こうにもタオルすらないような状態だった」と振り返る。

 それでも「一からやり直そう」と再建を模索。一帯が市の土地区画整理事業の対象となったことなどから元の場所での再建は断念したが、道の駅人吉近くの計約5000平方メートルの土地で建設を進め、2024年9月に完成した。

1棟貸し切り、露天風呂付き

 客室は市内では珍しいという1棟貸し切りの離れで、全室露天風呂付きの全8棟。宿泊客が周囲に邪魔されず、落ち着いてくつろげるのが魅力で、天然温泉が流れる露天風呂では山の景色や星空を楽しめる。松田さんは「長年お世話になった土地を離れるのはつらかったが、絶対再建するという気持ちでここまでやってきた。ホッとできる空間でゆっくり過ごし、リフレッシュしてほしい」と話している。

 現在はプレオープン中で、金~月の宿泊のみ予約を受け付けている。グランドオープン後は毎日営業する。問い合わせは同館(0966-22-2410)へ。


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