【宮崎】農家の所得向上へ 延岡市がサフランの生産に力

 宮崎県延岡市は、香辛料などに使われる「サフラン」の産地化に取り組んでいる。農家の所得向上が期待できることから、「延岡ひなたサフラン」のブランドで5年前に本格栽培を開始。今では市の通販サイトで品切れするなど品質の高さが人気となっている。一方、生産量の減少や販路拡大が課題で、市は新規生産者の掘り起こしなどに力を入れるとしている。

「世界一高価な香辛料」とも

 花の雌しべを乾燥させてできる香辛料のサフランは上品な香りが特長で、パエリアなどの料理に使用されている。大量生産が難しく「世界一高価な香辛料」とも言われ、国内では大分県竹田市が産地として知られる。


つぼみの状態になったサフラン

 市は、サフランが稲刈り後の田んぼで裏作として栽培できることに着目。農家の収入増につなげようと、2015年度に九州医療科学大(延岡市)と共同で産地化を目指す事業を開始した。20年度に本格栽培がスタートし、現在農家7戸が計21アールで栽培している。

 市によると、毎年12月に田んぼに球茎を植え付け、5月に掘り上げた後、高温多湿を避けて旧北方小学校の教室内の暗室で保管する。11~12月になると、福祉作業所の利用者が開花前のつぼみから雌しべを収穫する。また、品質向上を図るための成分分析は同大が毎年実施している。

市の通販サイトで品切れ

 24年の生産量は乾燥状態で計293グラム。商品は粉末状を含めて2種類があり、価格は1グラム入りでいずれも1500円(税込み)。鮮やかな色合いや香りの高さから県外の料理人の引き合いが多く、商品を取り扱う市の特産品通販サイト「のべちょる」では完売のため、11月から販売を休止している。


「延岡ひなたサフラン」(延岡市提供)


 一方、生産者数や栽培面積は本格栽培が始まった5年前からほぼ横ばいの状態が続き、生産量は減少傾向にある。生産者の高齢化や担い手不足が主な要因で、市によると、機械化が難しく、植え付けなどの作業の大半で人手を必要とする点も影響しているという。


 市は、農家1戸あたりの年間収入が最高で10万円程度になることを周知し、新規生産者の開拓につなげていく。また、来年度には著名な料理人に延岡産サフランを使ったメニューを考案してもらうイベントの開催も計画している。市農業畜産課の担当者は「産地化を目指して生産農家の増加や販路拡大を図っていきたい」と話している。


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