「田んぼダム」で洪水を防げ! 宗像市が釣川支流域で調査・研究に着手へ

田んぼダム候補地の一つ。田に雨水をためて釣川支流(手前)の増水を防ぐ

 全国で豪雨災害が多発していることを受け、福岡県宗像市は新年度、大雨が降った際に水田に雨水をためて下流域の洪水を防ぐ「田んぼダム」の調査・研究に乗り出します。昨年7月の九州豪雨で氾濫した熊本県の球磨川流域など各地で計画や導入が進んでいますが、宗像市によると、福岡県内の自治体が着手するのは初めてといいます。


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福岡県内の自治体で初

 田んぼダムは、水田の排水口に水位を調整する堰板(せきいた)を取り付けて雨水を蓄え、河川の増水を抑える治水技術です。国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構」(農研機構、茨城県)によると、1ヘクタールの水田で水を蓄える高さを10センチ上げると、1000立方メートル(1000トン)の雨水を一時的に貯留できます。あぜの高さなどの条件次第で、貯留量の増加も期待できます。


田んぼダム用の堰板(提供:トーヨー産業)

 土地改良や排水の資材販売・施工などを手がける「トーヨー産業」(千葉県)が、農研機構などとの共同研究で、田んぼダム用の堰板を開発しました。

 宗像市が調査・研究を予定しているエリアは、市内を流れる2級河川・釣川(つりかわ)の支流域に広がる水田約60ヘクタールです。釣川には支流が多く、豪雨時は本流との合流部で水があふれるリスクが高まるといいます。

4月に調査研究チーム

 4月に調査研究チームを発足させ、調査エリア図の作成や作付け状況の把握などに着手。6月には先進地の球磨川水系の視察を予定しています。農業者への説明や協力要請、休耕田の活用、雨水をためることで減収が生じた場合の補償などについても研究を進め、来年1月に試験的に堰板を取り付ける「モデル水田」の選定を目指します。


堰板で水がたまった田んぼ(提供:トーヨー産業)

 宗像市は新年度の一般会計当初予算案に関連経費100万円を計上。市農業振興課は「水田の治水力を高めることで、下流域を水害から守っていきたい。取り組みを進めることで、防災意識の向上にもつなげたい」としています。


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各地で取り組みが進む

 水を蓄える水田の力を活用して洪水の防止や軽減を図る「田んぼダム」は、コメ作りが盛んな新潟県で始まりました。堰板の取り付けが安価でできる上、維持管理の手間がほとんどかからないこともあり、東日本を中心に普及しています。



豪雨の後、堰板を設置した田んぼダム(下)は雨水を蓄えている(提供:農研機構農村工学研究部門)

 熊本県は今年の梅雨に備え、球磨川流域で200ヘクタール規模の田んぼダムを整備します。宮崎県日南市の甲東地区や2015年の関東・東北豪雨で被災した栃木県小山市はすでに導入。19年の台風19号で浸水被害が出た埼玉県行田市、宇都宮市も取り組みを進めています。


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