京都から宗像の離島へ 女性アーティストが新天地で目指す「ほどよい異分子」とは?

大島に移住したアーティスト井口真理子さん

記事 INDEX

  • 初めての「景色」に感動
  • 「私と大島のコラボです」
  • 循環や交流のきっかけに

 福岡県宗像市の離島・大島。自然豊かな島に5月、京都出身のアーティスト井口真理子さん(32)が移り住みました。島の存在を知ってからわずか1年での決断。新しい環境に四苦八苦しながら、「ほどよい異分子」を目指して創作活動に励んでいます。

大島
 宗像市の神湊港の沖約6.5キロに位置する離島。周囲15キロほどの島では約560人(2022年7月末時点)が暮らし、住民の多くが漁業に従事している。

初めての「景色」に感動


約560人が暮らす大島

 井口さんは京都市左京区で生まれ育ちました。地元の芸術大学を卒業後、シェアスタジオで絵を描きながら、会社員としても働いてきたそうです。

 大島のことを知ったのは昨年6月。親友の結婚パーティーで、島にある小さな宿「MINAWA」を訪れたときでした。空と海とが一つになる水平線、地球の鼓動を聞いているような神々しい自然――。初めて目にする景色に感動したといいます。


大島との出会いを振り返る井口さん

 親友のパートナーで、「MINAWA」を経営するローカルツーリズムの代表取締役・糀屋総一朗さん(44)ら、自分らしさを大切に生きる個性豊かな人々にも出会い、アーティストとして独り立ちしたいという気持ちが強くなりました。

 昨年冬、島の空き家にアーティストの活動拠点を作る計画を糀屋さんから聞き、移住を決意しました。


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「私と大島のコラボです」

 5月に島に渡り、改修が終わった空き家に6月に移りました。しかし、室内の傷みや汚れが気になり、京都では見たことのない虫もたくさんいました。

 「レコードをかけて窓から港を眺めながら絵を描く、そんな生活を想像していましたが、まったく違いましたね」。運び込んだ荷物も広げられないまま、清掃や虫の駆除に追われるところから新生活がスタートしました。


空き家を改装したアトリエ

 初めての経験に戸惑いながら、新しい土地での創作活動を開始。約1か月かけ、新居の近くにあるシェアスペース「umiba」に、アクリル絵の具で描いた壁画「PRISM」が完成しました。


カラフルな色彩の「PRISM」

 幅約6メートル、高さ約3メートルの壁には、井口さんの創作テーマ「サピエンスの未来に生きる超越的未来人=NEW PEOPLE」が描かれています。島の内外の人の交流や化学反応から生まれる光が、プリズムのように大島を照らすイメージを表現したそうです。

 井口さんは「夕焼けの空に見た青とピンクのグラデーションなど、島の影響を受けて完成しました。私と大島のコラボレーションのような作品です」と話します。

循環や交流のきっかけに

 「PRISM」を制作している最中、島のお年寄りが見学にやって来るなど、活動は徐々に注目を集めています。絵画教室の開催など交流の取り組みも進めており、移住後の第2弾として「MINAWA」の壁を彩る作品の制作にも取りかかっています。


「umiba」で定期的に開かれるバーも「PRISM」が彩る(提供:アートファンドΩ)

 一方で、「完全に島の人になってしまうと、新鮮な視点やアイデアが生まれにくくなるのでは」とも考えている井口さん。将来的には、大島を活動の基盤に、時には京都へ戻ったり、海外に飛んだりと、複数の拠点で創作することを思い描いています。


「ほどよい異分子」として島での創作を始めた井口さん

 「外の目を持ち続けながら、島の人たちと新しくて面白いことをやっていく『ほどよい異分子』でありたいと思っています。アートを通して循環や交流が起こるきっかけができれば」



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