まもれ!博物館 九博が館内マナーの「なるほど」を動画で紹介
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九州国立博物館(福岡県太宰府市)が、貴重な収蔵品を保存するための取り組みや来館者に守ってほしいマナーを周知する動画を制作し、YouTubeで公開しています。ルールやマナーを窮屈に感じる人も、見れば「なるほど」と思う内容です。
大切な文化財がたくさん
九州で唯一の国立博物館である九博には、毎年80万人以上が訪れます。太宰府天満宮に近いこともあり、観光客にも人気のスポットになっています。
約1700点を数える収蔵品の中には、「太刀 銘 来国光」や「栄花物語」の写本といった国宝もあります。九博を含め、どの博物館も貴重な文化財を後世に残すため、保存にはとても気をつかっています。
マナーには「理由」がある
動画では、「展示品に触る」「館内でボールペンを使う」など警備員が来館者に注意する機会が多い事例を取り上げました。また、九博が文化財を守るために普段から細心の注意を払っている様子を紹介しています。
例えば、紙や布の大敵となる昆虫。山に近い九博は虫が入りやすい環境にあり、虫の繁殖要因となる食べかすが落ちていることは絶対に許されません。
館内で1匹でも見つかれば、科学課の職員が「どこにいたか」「どんな種類か」「ほかにいないか」などを徹底的に調べ、現場はちょっとした騒ぎになるとのことです。
「マナーは知っていたけど、理由まではよく考えたことがなかった」。動画はマナーの説明にとどまらず、その裏側にある「わけ」をテンポよく紹介していきます。
「手を触れないでください」の注意書きは、展示品の欠損を防止することはもちろんですが、カビの発生につながる手あかが付着しないようにするためです。ボールペンを使わないように求めているのも、インクの汚れが付くのを防ぐためです。
「お願い」の多さを"反省"
今回の動画を発案したのは、3人の女性職員です。出張などでほかの博物館を訪れる機会が多いという3人だからこその"気づき"があったとのことです。
実は、九博に掲示されている禁止事項のサインは、他施設に比べて多いのだそうです。「お願い」は全部で10項目あり、目を通してみると「もっと簡潔に整理して表記できるのでは?」というものもあります。
「観覧前に細かい注意書きを見てもらうより、大切な部分を動画で知ったうえで来館してもらえれば」。そんな思いから今回の企画はスタートしました。
担当者の1人は「ヨーロッパでは幼い頃から博物館・美術館に親しんでいるので、館内での過ごし方が自然と身に付いています」と教えてくれました。作品の前で絵を描く人がいたり、スタッフらの話を熱心に聞く子どもたちがいたり、各自がマナーを理解してそれぞれのスタイルで楽しむのが日常風景になっているといいます。
3人は「博物館は注意すべきことが多くて『近寄りがたい』と感じる人もいるかと思います。動画でポイントをおさえ、気軽に足を運んでほしいです」と話しています。