障害のあるスタッフがすべてを切り盛り 福岡市役所1階の「ユニバーサルカフェ」
記事 INDEX
- 多様性を認め合う場所に
- 笑顔の接客と気遣いが好評
- 適材適所でやりがい育てる
福岡市役所1階の喫茶コーナー「ユニバーサルカフェ」は、調理や接客などすべての業務を障害を持つスタッフが担っています。運営会社は「働きがいを感じてもらうとともに、多様性を認める社会づくりにつながれば」と期待しています。
笑顔の接客、気遣いが好評
カフェは国内外からの観光客を含め、誰もが利用しやすい空間を目指して2012年、市役所1階が刷新されたのに合わせて開店。福岡市が、障害者雇用を条件に運営業者を公募しており、障害のある人も調理補助や接客などを行ってきました。
今年4月からは、障害福祉サービス事業を手がける「カルぺ・ディエム」(福岡市早良区)が運営。弁当の製造販売やレストラン運営で培ったノウハウを基に、あらゆる業務を現場に任せています。
スタッフは、レストランなどで経験を積んだ20~50歳代の男女6人。身体に障害のある社員2人が責任者を務め、知的障害、精神障害の計4人が調理や配膳、会計を担当しています。明るいあいさつや笑顔の接客、こまやかな気遣いが好評です。
調理担当の木寺竜聖さんは「この仕事を精いっぱいやっていきたい」、接客中心の山本泰子さんも「やりがいを感じる。調理業務もこなしたい」と充実した表情です。
適材適所でやりがい育てる
一般の店と同様、客とのやり取りの中で苦情が寄せられることもあります。それでも、同社代表の西田英司さんは「スタッフにとっては『気づき』になり、そこから改善できれば自信につながります」と前向きにとらえています。
精神保健福祉士でもある西田さんは精神科病院や福祉施設に勤務していたとき、障害を持つ人の働く場が限られていることに疑問を感じました。そこで、新たな就労の場をつくろうと弁当の製造販売を始め、2年前には福岡市民福祉プラザ(中央区)の中にレストランを開きました。
いずれの職場でも障害の特性や個性を理解したうえで、調理や販売、会計など、それぞれに向いている業務を任せ、スタッフのやりがいや自信を育てています。
「健常者にも向き不向きはある」と言う西田さん。「適材適所で配置すれば、スタッフ全員が障害を持っていてもきちんと運営できることを多くの人に知ってほしい」と話しています。