八女福島仏壇の5代目店主が作るこだわりスピーカー 「仏壇も音楽も癒やし」
記事 INDEX
- 明治から続く老舗の5代目
- 福岡産業デザイン賞を受賞
- 仏教の自由な発想を反映
福岡県八女市の伝統工芸「八女福島仏壇」を手がける店の5代目が、理想のスピーカー作りに打ち込んでいます。左右のチャンネルが一体化したコンパクトサイズながらコンサート会場にいるような臨場感と音の広がりが特徴で、愛好家から高く評価されています。店を訪ね、スピーカーへのこだわり、仏教とのつながりを聞きました。
明治から続く老舗の5代目
独自のスピーカーに情熱を傾けているのは、八女市本町にある「城後仏壇店」の店主・城後好孝さんです。店は1878年(明治11年)から続く老舗で、大小様々な仏壇が並ぶ店内の一角に、城後さん自慢の木製スピーカー「星」が置かれています。
早速、試聴させてもらいました。高さ19センチ、幅31センチ、奥行き19センチという小さめのサイズにもかかわらず、大きな音量と臨場感に引き込まれます。それでいて、音楽を一方的に押しつけるわけでもなく、自然で豊かな音の広がりを体感できました。
城後さんは「このスピーカーは映画からクラシックやジャズ、環境音まで"なんでもあり"で苦手がない。生演奏に近く、どんな高級品でもこれに勝てる商品はないと思います」と自信の表情です。
コンサート会場にいるような臨場感と音の広がり――。八女市の伝統工芸「八女福島仏壇」を手がける店の5代目がこだわりのスピーカーを作っています。#八女市 #伝統工芸 #音楽 pic.twitter.com/vI6r4Cvkkb
— 福岡ふかぼりメディア ささっとー (@fukuoka_sasatto) January 5, 2022
福岡産業デザイン賞を受賞
中学生の頃からオーディオを触るのが好きだったという城後さん。音楽を聴くことよりも「いい音を出したい」との思いがどんどん募り、雑誌などを読んで独学でスピーカーを作るようになったといいます。
「作ってみたら市販のものにはない音が出て、そこからのめり込みました」。父の後を継いでからも、仏壇の制作・販売を手がける傍ら、趣味として研究をずっと重ねてきました。
10年ほど前、知人のデザイナーに勧められて、販売を始めることに。当初はもう少し大きいものを作っていましたが、周囲のアドバイスも踏まえ、コンパクトなサイズを採用しました。八女福島仏壇で培った技術を生かし、漆を塗ることで振動を抑え、よりクリアな音を実現しました。
これまでにオーディオ愛好家らを中心に数十台を販売。置き場所を選ばないサイズ感や手塗り漆の技術を用いたデザインなどが評価され、2012年度には福岡産業デザイン賞(現在の福岡デザインアワード)も受賞しました。
昨年12月には、福岡市中央区で開かれた最新スピーカーの展示イベントに参加。城後さんのスピーカーの前から離れない人や、「こんなものがあったら家から出られなくなる」と感激する人もいたそうです。
仏教の自由な発想を反映
「仏壇の仕事と直接関係があるわけではなく、あくまで趣味で続けてきた」と城後さんは話します。それでも、左右のチャンネルが一体化した独特な形、ほかにはない音質が実現したのは、「固定観念にとらわれず、肩の力を抜いて自由な発想を」という仏教の教えが反映されたからだといいます。
この教えを忘れずに試行錯誤を続け、現在は大きさの異なる3種類のスピーカー(税抜き6万6000円~)を販売しています。追加料金で漆を塗ることもできます。これらの一部は城後さんが店にいる時であれば、試聴も可能です。
城後さんは「仏壇も音楽も同じ『癒やし』。いつか病院で使ってもらったり、小学校の教育で使ったりしてもらえたらうれしいです。このスピーカーがどのように育っていくかこれからもみていきたいです」と話しています。
店名 | 城後仏壇店 |
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所在地 | 福岡県八女市本町304 |
営業時間 | 10:00~18:00 |
電話 | 0943-22-2337 試聴したい場合は事前に連絡を |
公式サイト | JOGO Speaker Official |