トーチにともる伝統 八女提灯の技術でインテリア照明を開発
国の伝統的工芸品「八女提灯(ちょうちん)」を手がける福岡県八女市の「シラキ工芸」が、提灯制作の技術を生かしたインテリア照明を開発し、販売を始めた。生活様式の変化などで盆提灯の需要が減る中、関係者は「普段使いができる照明に伝統技術を取り入れることで、提灯の可能性を広げたい」と話している。
伝統工芸の可能性
1980年創業の同社は、地元産の手すき和紙を使い、提灯の「火袋(ひぶくろ)」と呼ばれる明かりがともる部分を制作している。職人を自社で雇用して育成しており、現在は若手職人を中心に7人が提灯作りに取り組んでいる。
同社などによると、盆提灯に代表される八女提灯関連の出荷額は1998年の約150億円から、2023年は3分の1の約50億円まで減少。05年は29社あった製造業者も職人の高齢化などで倒産や廃業が増え、24年は11社にまで減った。
提灯業界が衰退する中、同社は22年、伝統工芸品の生産事業者を支援する県の「リーディングカンパニー創出事業」の対象に選ばれた。伝統工芸品に特化したコンサルティングを手がける中川政七商店(奈良市)のプロデュースで、八女提灯の制作技術を生かしたインテリア照明を開発することになった。
新商品「トーチン」
新商品の名称は「TORCHIN(トーチン)」。英語で「たいまつ」を意味するトーチと提灯を組み合わせた。白い和紙を張った火袋は、竹ひごなどをらせん状に巻いて骨組みを作る八女提灯の伝統技法を取り入れて制作した。
火袋の上部にある金属製のタッチセンサーに触れると点灯する。充電式バッテリーを内蔵し、支柱部分をトーチのように持って運ぶことができる。火袋の形は5種類あり、価格は税込み2万4200円~3万3000円。
来春以降は、カラーの火袋のほか、絵付け技術を活用してロゴやイラストをあしらったオリジナル火袋の受注なども検討していくという。
7月から中川政七商店の直営店とECサイトで販売しており、8月中旬からは全国の小売店での取り扱いも始まる予定。
7月上旬に開かれた発表会で、入江朋臣社長は「伝統技術を守りながら若い人材の感性を取り入れ、普段使いができる八女提灯を提案していきたい」と話した。