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約50年にわたって活版印刷を続けてきた「文林堂」(福岡市城南区鳥飼)の店主・山田善之さんが、事業承継のマッチングサイトで後継者を募っています。「クラウド継業プラットフォームrelay(リレイ)」で詳細を紹介しており、譲渡希望額は500万円、応募の締め切りは3月17日です。山田さんは「活版印刷の技術と印刷への想(おも)いを引き継いでほしい」と呼びかけています。
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活版技術への強い愛情
デジタル化の進展で、出番が失われつつある活版印刷。しかし、業界の大ベテランである山田さんのもとには、ぬくもりのある活字の風合いを求めて福岡県外からも依頼が舞い込み、熱心なファンが見学や体験会に訪れます。
今年で81歳になる山田さん。年齢を重ねるごとに「活版印刷を受け継いでくれるような人はいないだろうか……」と考えてきたそうです。やはり、文林堂の将来を気にかけていた"お弟子さん"の一人がリレイに問い合わせ、今回の公募に至りました。
想いをつなぐ事業承継
ライトライト(宮崎市)が運営するリレイは、地域の小さな事業者と、全国の新たな担い手を結びつけるマッチングサイトです。2020年7月にスタートし、「もうかるかどうか」という尺度だけではなく、その事業への"想い"をつなぐ新しいスタイルの「継業文化」を目指しています。
文林堂の情報を紹介したページには、公開初日から多くのアクセスがあり、後継ぎ希望者もすでに数十人にのぼるとのこと。「活版印刷の文化を絶やしたくない」「ボランティアでもいいから関わりたい」という熱い想いが届いており、山田さんの希望にマッチする人材が見つかれば、期限前に公募を終了する可能性もあるそうです。
ライトライトの担当者は「伝統的な手法をなんとか残そうという熱量の高い希望者が集まっており、特殊な分野だと感じています」と話します。
「惜しみなくサポート」
Webでの反響の大きさに驚く山田さん。バトンを渡す相手の顔が分からない不安を感じながらも、昔ながらの世界に新しい時代の風が吹き込むことで、これまでにない手法やアイデアが生まれるのではないかと期待しています。
「私もまだまだ続けたいのですよ」と笑いつつ、「果敢な後継者が現れてくれたら、惜しみなくサポートしたいですね」と話していました。