実用性はさておき ものづくり愛好家の『本気』に火がつく「ソレノイドコンテスト」

第9回の大賞に輝いた「押し相撲マシン」。リモコンのボタンを押すとソレノイドが動き、突っ張りを繰り出す

記事 INDEX

  • あまり役には立たないが……
  • 高度な技術でユーモアを競う
  • 今大会は「押し相撲マシン」に

 ナンセンスでユーモアたっぷりの発明品が寄せられる工作コンテントがある。福岡県飯塚市の中小企業「タカハ機工」が2014年に始めた「ソレノイドコンテスト(ソレコン)」で、小学生から80歳代まで幅広い世代が参加する毎年恒例の行事に。ものづくりの楽しさを伝えるイベントとして、国からも評価される取り組みになっている。

あまり役には立たないが……

 野球のボールを投げると空気を噴射しながら魔球のような軌道を描く「おならボール」。日めくりカレンダーのめくり忘れを防止し、自動で毎日破いてくれる「日めくりメクリッパー」。パソコンで文書作成中にファイル破損によるデータ消失を防ぐため、キーボード横から伸びるアームが『保存』キーを定期的に押してくれる「全自動論文保存機『 論文まもるくん』」。


おならボール


全自動論文保存機「論文まもるくん」

 これまでの大賞受賞作は、よく考えるとあまり役には立たないが、技術力とそれを達成するためのアイデアにあふれた作品が並ぶ。


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高度な技術でユーモアを競う

 タカハ機工が製造する電気部品「ソレノイド」は、電磁コイルに電流を流すと内部の鉄芯が押し出され、出たり入ったりの直線運動を繰り返す。モーターと同じ磁力の作用で動作し、ドアのオートロックや自動販売機、駅の改札機などに使われている。

 ただ、一般の知名度は低く、「企業のイメージアップのためにも製品を知ってもらいたい」(大久保泰輔社長)と工作コンテストが企画された。


タカハ機工のソレノイド。電流を流すと鉄芯が出たり入ったりする

 ソレノイドを使っていれば基本的に何でも応募でき。審査員長は、ユーモラスな機械や楽器を生み出しているアートユニット「明和電機」の土佐信道さんが担当。また「理工系漫画家」の見ル野栄司さんが特別審査員を務める。審査基準は「これまでにない使い方」「見た人を楽しませるユーモア」などに重点が置かれている。

 動画投稿による応募作品はすべてユーチューブでも公開しているため、ほかでは見られないユニークな"闘い"が注目を浴び、主催者も驚く柔軟な発想の作品が次々と寄せられるように。2015年には「ものづくりの楽しさを伝えた」として、「ものづくり日本大賞」の九州経済産業局長賞を受賞した。


※作品の動画は、ソレコンの公式サイトで視聴できる

今大会は「押し相撲マシン」に

 今年2月末に開催した第9回のソレコンには37作品が寄せられた。3Dプリンターやセンサー、複雑なプログラミングなどを駆使した作品を見比べながら約3時間かけて真剣な審査を行い、福岡県内の80歳男性による「押し相撲マシン」が大賞に輝いた。

 押し相撲マシンは、向かい合った力士人形にソレノイドがそれぞれ組み込まれ、ボタンを押すと「突っ張り」を繰り出す仕組み。2人で遊べる作品で、相手力士の手が伸びきったタイミングで突くと倒しやすい――といったゲーム性もあり、勝負がつくと旗が上がる。


 土佐さんからは「仕組みがよく考えられていて、完成度が高い。その一方で、手彫り人形の造詣の温かみのバランスがなんとも言えない」と高い評価を得た。

 男性は常連の投稿者。大賞を受けたにもかかわらず、「満足な出来栄えではなかった」と反省のコメントを寄せ、「勝敗を数えるカウンターをつけたい」と、さらなる改良に意欲を燃やしているという。

 来年でコンテストは10周年を迎える。同社は「過去の受賞者を集めて祝うなど特別な大会にしたい」としている。土佐さんも「地方の企業の企画で、こんなにナンセンスで、とがったコンテストが続いているのは奇跡的。応募作の技術も上がっており、これからも楽しみ」と期待している。

社員の刺激、成果にも

 コンテストに寄せられる柔軟な発想に、タカハ機工の社員も刺激を受けている。これまで同社では、発注元の指示に応じたソレノイドを製造することが業務の中心だったが、アイデアを実現しようとする出品者の創意工夫をみて、「使い方」を意識した自主企画製品の開発が本格的に始まった。

 USBケーブルをつなぐだけでソレノイドへの電源供給と制御ができる基板付きの製品や、コントローラーで複数のソレノイドを制御できる製品などを商品化。一度に300台を超える大きな仕事を受注するケースも出るなど成果が上がっている。


「ソレコンに社員も刺激を受けている」と話すタカハ機工の大久保社長

 スマートフォンの操作で、ロッカーやドアを開閉できる電気錠の発売も予定しているという。大久保社長は「これまで、ソレノイドをどう使うかは相手先の問題として、こちらではあまり考えていなかった。ソレコンをきっかけに、社員のやる気も高まった」と、社業への相乗効果を感じている。


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