アナログ思考で子どもの創造力を伸ばそう! 放課後教育でボードゲーム制作に挑戦

記事 INDEX

  • アナログゲームを教育に
  • 保護者も感心する完成度
  • ゲームマーケットに出品

 放課後の教育サービスを提供する「アフタ―スクールび場」(福岡市南区)で、小学生がオリジナルのボードゲームを作りました。近年、ボードゲームで遊ぶ教育効果が注目されていますが、子どもたちが制作から関わるのは珍しい取り組みです。

アナログゲームを教育に

 「び場」という名前には、「遊び」と「学び」を通して子どもたちが大きく成長できる居場所をつくりたいという願いが込められています。代表の山里誠さんは東京大学を卒業後、大手メーカーに入社。2018年、母親が園長を務める保育園でアフタースクール事業を始めるのを機に、教育の道に進むことを決めたそうです。


デイサービス施設の跡を活用した「アフタースクールび場」

 現在、小学1年生から5年生まで33人が通い、積み木を使った知育教育や演劇を応用したドラマ教育などを行っています。

 ボードゲームを使った遊びも以前から取り入れてきました。アナログゲームは、対戦相手との会話を通じてソーシャルスキルが高まったり、ルールの活用法に考えを巡らせたりと、教育にプラスとなる要素が多く含まれていると山里さんは説明します。


各自の意見を「指示書」にまとめてゲームを作った

 自分たちでボードゲームを開発するプロジェクトは2020年に始まり、既存のゲームの分析やコンセプトづくり、試作、マーケティングなど、子どもたちが中心となって制作を進めてきました。ゲームの"設計図"ともいえる指示書にはゲームに用いるカードのイラストが描かれ、デザインなどの仕様が細かく記されています。


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保護者も感心する完成度

 制作したオリジナルゲームは2種類。『バズり王にオレはなる!!』は、プレーヤーが動画配信者となり、「動物」「バラエティ」など動画のジャンルが書かれたカードを駆使しながら再生回数の獲得を目指すというもの。ただし、失敗すると「炎上」してしまうため、「BAN(脱落)」を避けながら慎重に進めることが求められます。


2種類のゲームを制作

 『注文の多い魔女のレストラン』は、プレーヤー同士が力を合わせ、オードブル、スープ、メインディッシュ、デザートの4種の料理カードに書かれた"ミッション"をクリアしていきます。会話による相談は禁じられているため、お互いが上手にヒントを出し合う知恵と工夫が勝利の鍵を握ります。


試遊会の様子

 4月2日には、完成したゲームを実際にプレーしてみる試遊会が開かれ、制作に携わった小学生らが参加しました。「ボードゲームが好きなので、自分で作ることができてうれしい」「ミッションを考えることが大変で、難易度の調整を頑張りました」と笑顔を見せる子どもたち。様子を見守った保護者は「大人でも面白いと思えるくらい、うまく作られていると思います」と完成度の高さに驚いた様子でした。

ゲームマーケットに出品

 二つのゲームは、4月23、24日に東京ビッグサイトで行われる国内最大規模のアナログゲームイベント「ボードゲームマーケット2022」に出品する予定です。自分たちのゲームが商品化される貴重な経験とあって、山里さんは子どもたちの心境の変化に期待を寄せています。イベント終了後はオンラインで一般販売も行います。


販売に向けて丁寧に梱包(こんぽう)した

 び場と共同でプロジェクトに取り組んだ「サイコロ塾」(東京)の代表・財津康輔さんは、ボードゲーム制作について「自らが定めたルールの結果、何が起こるのかを想定する必要があるため、創造性の育成に最適です」と語ります。

 子どもの自立心を育む活動などに取り組むNPO法人「Wing-Wing」(福岡市)の代表理事・大木聡美さんは「このような活動を通して、子どもたちにはチャレンジ精神をどんどん身につけてほしい」と話しています。


ゲームを作った子どもたちと山里さん(後列右)、大木さん(同左)

 「子どもたちが心の中に抱えている"やりたいこと"を引き出し、実現できるようサポートしていきたいです」。理想の「び場」を目指して、子どもたちと一緒に山里さんのチャレンジも続きます。



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