福岡にも温泉があった!天神からも近い秘湯を深掘り取材

 湯の街・別府から福岡市に赴任して2か月あまり。「温泉ロス」で不調をきたし始めた頃、「福岡にも温泉があるよ」と教えられ、喜び勇んで出かけました。訪ねたのは、福岡市中央区天神から南へ車で20分ほどの(福岡市南区)に近い「博多温泉」。入ってみると、源泉掛け流しのしっかりとした温泉です。湯に体を沈めていると、ふと疑問が。「この辺に火山があったっけ?」。温泉地は火山に近いというイメージですが、付近に火山はありません。福岡で温泉が出る理由を調べてみました。


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井戸を掘っていたら…

 博多温泉は比較的新しく、50年ほど前に井戸を掘っていたところ、湯が湧き出したことが始まりだそうです。源泉は那珂川の周辺に点在しており、温度は50度前後。泉質は、カルシウム・ナトリウム―塩化物温泉です。飲泉もでき、口に含むと塩気があります。


飲むと塩の味がします

 「宿泊や日帰り入浴など、多いときは6軒の施設がありましたが、現在営業しているのは2軒だけです」。そう教えてくれたのは、旅館「富士の苑」(福岡市南区三宅)の代表取締役・藤野健二さんです。


「富士の苑」の藤野さん

 「福岡市民でも、この温泉を知っている人は少ないのでは」。たしかに、福岡市の内陸部に温泉が湧いているイメージはありません。藤野さんは「人口密集地で本物の温泉が楽しめるのは珍しい」とも話していました。


「富士の苑」の大浴場


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発祥の地を訪ねて


 井戸を掘っていたら温泉が湧き出てきたという現場に行ってみました。現在も、日帰り入浴施設「元祖 博多温泉 元湯」(福岡市南区横手)として営業しています。民家のようなたたずまいで、落ち着きます。


温泉の由来などを記した看板

 こちらは源泉の真上に湯舟があり、地下数十メートルから汲み上げる温泉をそのまま注いでいます。湯口の温度は49度。湯舟でも45度とかなりの熱さです。足からゆっくり入るのではなく、一気にザブンと入るのがコツなのだとか。常連や存在を知る温泉ファンを中心に、やや手狭な湯舟でお客さんたちが談笑するのが日常とのことです。別府の共同温泉を思い出し、懐かしい気持ちになります。


2人も入ればいっぱいになる湯舟

 「開業当初は民宿として営業し、湯治客でにぎわっていました」と教えてくれたのは、主人の安部隆宏さんです。1966年に温泉を見つけたのは、父・隆典さんだったそう。湯舟を家族で手作りし、当初は地域の人に無料開放していました。1969年、民宿兼日帰り入浴施設として営業を始め、周りで温泉の開発が進むと一帯に「奥博多温泉」という名前が付きました。ただ、「山奥でもないのに『奥』というのもねという話が出て、現在の『博多温泉』という名になりました」とのことです。


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「元祖 博多温泉 元湯」の安部さん

 「元祖 博多温泉 元湯」は、民宿だった名残で2階に広間があり、休憩所として開放しています。「湯上がりに休憩するだけでなく、仕事をしていく方もいらっしゃいますね(笑)」。温泉好きの若者、体を悪くした高齢者、汗を流したあとのスポーツマンなど、日々10人ほどが利用するといいます。「温泉を必要とする人に密着した施設として、長く続けていきたいです」と安部さんは笑顔を見せました。


レトロな雰囲気の休憩所


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