「小さな命」を新しい家族の元へ 福岡市うさぎ愛護センター

センターで保護されたウサギ。頭をなでられてうれしそう

 コロナ禍で広がった「巣ごもり需要」。「おうち時間」をペットと過ごしたいと、犬や猫だけでなく、ウサギを飼う人が増えている。一方で、面倒を見てもらえなくなるウサギも増加しているという。居場所を失ったウサギを一時的に保護し、新しい飼い主に引き継ぐ施設「福岡市うさぎ愛護センター」が7月、福岡市東区に開設された。

飼い主からの相談が急増

 所長の水上怜奈さん(27)は、小学生の頃から現在まで、ウサギと共にある生活を送ってきた。センターそばにあるウサギ販売店の店員でもあり、世話をしながら新しい飼い主を探している。


子どもの頃からウサギと一緒の生活を送ってきた水上さん


 「高齢で世話ができない」「(自分が)アレルギー体質だと分かり飼えなくなった」――。この2年ほど、ウサギの飼い主から寄せられる相談が急増しているという。


福岡市うさぎ愛護センター。毛が生え替わる時期は特にこまめな掃除がかかせない

 犬と猫の引き取りや譲渡は、自治体の動物愛護管理センターが行うが、ウサギは対象外。住宅街の一角で段ボールの中に放置されたウサギ、公園の遊具にひもでつながれて置き去りにされたウサギ――。こうしたウサギは拾得物として警察に一時預けられることがあっても、「世話の仕方が分からず、ウサギが環境変化で餌を食べなくなるため数日で死ぬケースが多いようです」と水上さんは話す。


公園の遊具につながれていたウサギ。拾得物として、警察に依頼されて預かっている


 「ウサギたちをなんとか守れないだろうか」と水上さんら有志は、うさぎ愛護センターの開設へ立ち上がった。

「ここにいる子をゼロに」


最大50羽のウサギを保護できるシェルター

 施設の開設に向けて3年ほど前から、福岡市の動物愛護管理センターの指導を受け、犬と猫の譲渡手続きを参考にしながら運営方法を模索した。これまでに15羽のウサギが新しい家族の一員として引き取られた。現在は5羽を保護しており、最大50羽が暮らせるシェルターも準備している。


ケージを出て遊ぶウサギ。譲渡後は写真や動画で様子を定期的に報告してもらう

 新しい飼い主を募りながら、爪切りやブラッシングといったウサギの飼育に必要な講習会なども行っている。引き渡しは無償だが、事前の審査で断ることも。譲渡後は、新しい家でのウサギの様子を写真や動画で定期的に報告してもらう。


保険に加入しているペットの数で、ウサギは3番目という

 ペット保険最大手の「アニコム損害保険」(東京)によると、保険に加入しているペットの数は犬、猫に続いて、ウサギが3番目に多い。2014年から20年までの間で、ウサギの契約数は5倍以上に伸びたという。


室温を一定に保たないと体調を崩す繊細な動物だという

 鳴き声は小さく近隣からの苦情が出にくい。散歩の必要もないため、比較的、飼育しやすいといわれるウサギ。とはいえ、水上さんは「温度変化に敏感で、室温を一定に保たないと体調を崩す繊細な動物」と注意を促す。「ここの施設にいる子たちが、温かい家族と出会い、ゼロになるように、発信をしていきたい」と話している。



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