リロ、ありがとう マリンワールド海の中道でラッコ追悼企画
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水面を気持ちよさそうに泳ぐリロ(2023年2月撮影)
福岡市東区の水族館「マリンワールド海の中道」で飼育され、2025年1月に死んだラッコのリロに宛て、悲しみをつづった手紙や花束が今も全国から届いています。同館はファンに感謝を表すとともに、来館者に愛されたラッコたちの思い出をたどろうと、追悼企画展「ラッコ飼育の歴史 マリンワールドとらっこ」を開いています。
おっとり優しいリロ
リロは国内唯一の雄で、同館ではただ1匹のラッコでした。07年に和歌山県のアドベンチャーワールドで誕生したリロは、12年に福岡へやって来ました。16年秋から雌のマナと一緒に暮らし始め、21年にはマナの妊娠が判明しました。しかし、マナは出産を前に体調が悪化し、死んでしまいます。
この時、国内でのラッコ飼育数はリロを含めて4匹という状況に。マリンワールドで独りになってしまったリロが少しでも穏やかに暮らしていけるよう、同館はそれまで以上に健康管理に気を配って世話を続けてきたそうです。
同館海洋動物課・飼育担当の中嶋千夏さんによると、リロはおっとりして包み込むような性格だったそうです。「気の強いマナの毛繕いをする優しい夫で、一緒に手をつないで眠ることもありました」と、2匹の"夫婦生活"を思い起こします。
ラッコは通常、寝ている子どもが海で漂流しないように親が手をつないだり、子の毛繕いをしたりすることがありますが、成獣同士ではあまり見られないといいます。中嶋さんは「マナへの愛情が来館者にも伝わっていたと思います」と話します。
リロの愛らしいしぐさを目当てに訪れるファンも多く、週に4日通い詰めたり、グッズを手に海外からやって来たりする人もいたそうです。コロナ禍では、施設の公式インスタグラムでリロの様子を配信し、自粛生活中の多くの人に癒やしを与えました。
24年12月27日、リロは餌のイカを食べなくなりました。すぐに展示を中止し、中嶋さんらは24時間態勢で治療を続けました。しかし、呼吸がだんだん浅くなり、1月4日朝に天国へと旅立ちました。ラッコの平均寿命は15~20年とされ、17年生きたリロは人間に例えると70歳に相当する年齢でした。
中嶋さんは「ほかの動物も担当しているので、その日はショーで笑顔を見せるのが苦しかった。リロのプールの前を通ったり、顔見知りのファンを見かけたりして、泣き出してしまうスタッフもいました」と振り返ります。
ファンの思い絶えず
「リロへのお花が今朝も届いたんですよ」。中嶋さんが、設置された献花台に案内してくれました。台にはファンから届いた手紙や花束、リロのイラストや写真が飾られています。
「たくさんの元気をもらったよ。ゆっくり休んでね…」「喜びと愛を与えてくれてありがとう」。ファンからの声は今もなお、同館に寄せられています。
そばには、「ありがとう リロ」と書かれたスタッフ手作りのメッセージボードがあり、おもちゃで遊んでいるリロの写真なども見ることができます。備え付けのモニターでは、リロが幼い頃の様子をスライドショーにまとめたり、食事タイムの映像などを流したりしています。
マリンワールドは1989年の開館当初からラッコの展示を行っていました。今回の企画では、これまでに飼育したラッコたちの思い出も振り返ろうと、それぞれの写真や飼育員の思いを年表を交えてパネルで紹介しています。
追悼企画展は4月6日まで。「楽しかったラッコたちとの思い出を振り返ってもらえれば」と中嶋さん。「リロのために泣いてくれる方がたくさんいました。少しでも多くの方が、リロとの思い出を胸にとどめてくれたらうれしい」と話しています。