大牟田グルメ “天下無双”のお好み焼き「高専ダゴ」

地域に愛され続ける「天下無双 高専ダゴ新みつや倉永店」の店内

記事 INDEX

  • 「もぅまとめて焼いてやっけん」
  • 「ダゴスペシャル大盛り」を注文
  • 炭鉱のまちとお好み焼きの関係

 「お客さんには満腹で帰ってほしいですね」――。縦30センチ、横50センチ、重量は2.5キロ。鉄板いっぱいに広がる生地を、熟練の店長が2本のヘラで鮮やかにひっくり返します。他に類を見ない、超巨大お好み焼き「高専ダゴ」を提供する福岡県大牟田市の食堂「天下無双 高専ダゴ新みつや倉永店」を訪ねました。

「もぅまとめて焼いてやっけん」

 大牟田市などの一部地域では、昔からお好み焼きのことを「ダゴ」と呼んでいたそうです。西山隆店長(46)によると、高専ダゴはたくさんのキャベツなどでタネを作る大きなお好み焼きで、店の先代オーナーが考案しました。

 


 新みつやは約60年前、熊本県境に近い有明高専(大牟田市東萩尾町)のそばに「荒尾本店」(熊本県荒尾市)を開店し、学生向けの食堂としてスタートしました。


壁一面の色紙。多くの有名人が訪れた


 当初は、普通サイズのお好み焼きを提供していたそうです。しかし、学生たちが「肉玉」「イカ玉」「俺もおんなじやつ!」と、それぞれ好きなメニューを一斉に頼むため、先代が「あー、もぅめんどくさかー、まとめて焼いてやっけん、これば食うとかんね」と、食材をいっぺんに焼いて学生に出したのが始まりだといいます。


店のロゴが入った取り皿とのれん。のれんには「味と心を焼いて五十九年」と書かれている

 以来、高専のダゴ焼きとして名前が広まり、今では大牟田を代表するグルメの一つに。店は荒尾本店と倉永店のほか、オーナーの親族が営む姉妹店が大牟田市や熊本県内にあり、学生やサラリーマン、家族連れらで連日にぎわいます。




なぜ、お好み焼きを「ダゴ」と呼ぶの?

 ダゴの語源には諸説あり、小麦粉を練った団子と季節野菜をしょうゆやみそ仕立てで食べる郷土料理「だご汁」に由来するとの説や、生地を混ぜる過程から「ぐちゃぐちゃにする」という意味でそう呼ばれるようになったとの説も。西山店長は「少なくとも私が子どもの頃からお好み焼きのことはダゴと呼んでいました」と話します。




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「ダゴスペシャル大盛り」を注文

 「3人前のスペシャルを大盛りにすれば、食べ盛りの学生さんも満足です」と西山店長。店で提供するメニューで最大サイズの「ダゴスペシャル大盛り」(4~5人前サイズ、税込み1890円)を目の前で作ってくれました。


具材はシンプルだが、大満足のボリューム


 材料は千切りキャベツ1玉分、焼きそば麺2食分、卵3個、豚肉とイカ。それらをボールに入れ、水で溶いた小麦粉と混ぜてタネを作ります。普通のお好み焼きと違い、だしや山芋などは入れず、大量のキャベツで食べ応えを出します。先代の「安く、おなかがいっぱいになるように」という思いが込められているとのことです。

 タネを鉄板全体に広げて待つこと約10分。片面が焼けたら、ヘラを生地の下に差し込んで持ち上げるようにし、迷いなく一気にひっくり返します。


客の目の前で調理。裏返すときは高専ダゴが宙を舞う

 1日に100枚ほどの高専ダゴを焼くそうです。客の目の前で形を崩さずに裏返すのは至難の業で、西山店長でさえ「プレッシャーがかかります」と話します。


タオル2枚を重ねて返す特訓をする


 普段はタオルを使って生地を裏返す練習をするそうで、客の前で返せるようになるまでに半年以上かかるといいます。

 再び10分ほど待って両面が焼き上がれば、仕上げにトロリとまろやかなオリジナルソースを塗ってくれます。ソースは20種類以上の調味料を炊き込んで作る先代直伝の味。甘口と辛口があり、好きな味を選べます。


秘伝のソース(左上)を塗って、魚粉と青のりをかければできあがり

 ソースの上に、魚粉と青のりをまぶして完成です。鉄板の上でソースが焦げるにおいと、魚粉の香りが食欲をそそります。


「卒業生が家族を連れて食べに来てくれます」と西山店長

 自身も小学生の頃から家族で高専ダゴを食べに来ていたという西山店長。「鉄板を囲んで、みんなで分け合って食べた思い出の味です。作りがいもあるし、小さい子どもが喜んで食べてくれるのを見るとうれしくなります」と笑顔で語りました。




食べきれない時は…

 食べきれない時は持ち帰りをすることができます。店員に声をかけると、食べやすいサイズの長方形にカットして、パックに詰めてくれます。持ち帰りの秘伝のソースも付けており、「気軽にお申しつけください」(西山店長)とのことです。



炭鉱のまちとお好み焼きの関係

 大牟田市民のソウルフードの一つとして「お好み焼き」があげられるのは、市内にお好み焼き店が多いことと関係しています。

 同市などによると、市役所職員が20年ほど前、お好み焼きが市民の身近な存在であることに着目。お好み焼き店が駄菓子店に併設されていたり、食堂として営業する店があったり、職員が電話帳を基に店の数を調べたところ、九州の人口10万人以上の自治体の中で大牟田市が人口比で最も多いことが判明したそうです。


食欲をそそる高専ダゴ

 炭鉱で栄えた大牟田市では、お好み焼きの腹持ちの良さが労働者たちに好まれ、妻の副業でお好み焼き店を開く人もいたことなどから、今でも多くの店が残っているとされています。「高専ダゴ」は、子どもから大人まで幅広く愛されるご当地グルメ、地域の食文化として根付いています。

<天下無双 高専ダゴ新みつや>
■倉永店 
所在地:福岡県大牟田市倉永1678 不知火ドライブイン内(国道208号沿い)
電話:0944-58-1711

■荒尾本店
所在地:熊本県荒尾市下井手助丸495
電話:0968-66-1911



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