古本を街のコンテンツに 古賀市から広がる「みんふるや」
記事 INDEX
- カフェの一角を間借り
- 一人の男性の思いから
- 本のある場所をつなぐ
店舗の空きスペースを利用して古本を販売する「みんふるや」の取り組みが福岡県古賀市を中心に行われています。街の本屋が消えていく現状をなんとかしたいという思いからスタートしたプロジェクトは、地域の理解と協力で徐々に広がっています。
カフェの一角を間借り
古賀市天神にある「CREATE SPACE MIRACO」。コワーキングスペースとカフェを兼ねた店内には、間借りの古本屋「ヤドカリ古書店」の本棚が設置されています。寄付で集まった本は人気小説から雑誌、絵本まで幅広いジャンルがそろい、その場で購入することができます。
本を買うだけでなく、持ち帰り商品を待つ間に絵本を楽しむ親子や、カフェに来るたび少しずつ小説を読み進める常連客もいるそうです。MIRACOを運営する一般社団法人こがみらいの代表理事・魚谷千代子さん(65)は「本好きな人はたくさんいるので、ニーズにも応えられ、とても喜ばれています」と話します。
一人の男性の思いから
プロジェクトの中心を担うのは、古賀市在住の柿原啓亮さん(38)です。仕事の傍ら、空きスペースを提供してもらえる場所を少しずつ増やしてきました。
以前から漠然と「何か街に関わることをしたい」と考えていた柿原さん。地域に空き店舗が増え、本屋も減って活字文化が衰退していくことに危機感を覚えます。「古本を空き店舗などに集めて売れば地域のコンテンツになるのではないか」。そんな発想から2019年、一人でプロジェクトに取り組み始めました。
はじめはTwitterで、まちづくりに関わる地元関係者とのつながりを持ち、古本の提供を呼びかけつつ、空きスペースを提供してくれる店を開拓していきました。その一つ、「なかいわ整体院」の院長・中岩祐一さん(38)とは意気投合し、現在では整体院をプロジェクトの事務局として利用しています。
本のある場所をつなぐ
現在、ヤドカリ古書店は古賀市に6か所、新宮町に1か所に増えました。購入に加えてレンタルもできる”間借り図書館”も市内外の4か所にあります。このほか、フリーマーケットなどにも定期的に参加して古本を販売しています。
これまでに数百冊を販売。事務局に届く本もどんどん増え、対応できるぎりぎりの量になってきたといいます。中岩さんとともに地域の祭りを開催するなど、古本にとどまらず、活動の場は広がっています。
「子どもたちには紙の本の質感に触れてもらい、大人には昔の古本屋の懐かしさを感じてほしいと思っています。本がある場所を継続させる無理のない仕組みをつくり、次の世代につないでいきたいです」と柿原さんは話しています。