「八女茶」発祥600年 本玉露の高級ボトルで『YAME』を世界に!

お披露目された高級ボトリングティーの試作品

記事 INDEX

  • 「高級ワインに匹敵」
  • 日本茶離れへの危機感
  • 100年先に向けた挑戦

 八女茶の最高級ブランド「八女伝統本玉露」を世界に発信しようと、福岡県八女市や生産者、茶匠の各団体などでつくる「八女伝統本玉露推進協議会」が、高級ボトリングティーの開発を進めています。八女茶の発祥600周年となる2023年春の完成を目指し、世界で活躍するソムリエ、フランソワ・シャルティエ氏と連携してブランド力を高めるとともに、販売網を構築していく考えです。

「高級ワインに匹敵」

 「国内にとどまらず、世界中に八女茶ファンが増えれば、すばらしい」

 福岡市内のホテルで2022年12月に開かれた記者会見で、推進協議会の江島一信会長はボトリングティー開発プロジェクトへの期待を語りました。


記者会見で八女茶の入ったワイングラスを手に笑顔を見せるシャルティエ氏(中央)と江島会長(右)ら

 開発を進めているのは、八女伝統本玉露の茶葉を使った緑茶。氷出しをイメージした、まろやかな味わいに仕上げます。世界各地の高級レストランで取り扱ってもらうため、ワインボトルと同じ750ミリ・リットル瓶を使用。「著名なレストランには必ず、ワインセラーがありますから」と、協議会の広報担当者は話します。

 価格は1本1万5000~3万円を想定。「高すぎるのでは?」と感じてしまいますが、「それだけの価値があります」と担当者は言い切ります。「茶葉は1キロ10万円ほどの高級品。海外市場では、高級な中国茶が1キロ数百万円で取引されるケースもあり、八女茶の市場価値をもっと高めていきたい」


 会見では試作品がお披露目されました。グラスに注がれた緑は美しく、癒やしを感じさせます。口に含むと、甘みやほのかな渋みといった重層的な味が広がり、複数の参加者から「おいしい」という声が漏れました。

 シャルティエ氏は味の最終確認や、流通に関する助言を担当。半年前に訪れた八女で、地元独特の飲み方「しずく茶」などを楽しみ、「あの感動は忘れられない。人生が大きく変わった」と八女茶にほれこんだそうです。「エレガントで後味が長く続く、ドイツの最高峰の『リースリング』(ワイン)を飲んだときのような印象を受けた」


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日本茶離れへの危機感

 海外市場に挑む背景には、国内で進む「日本茶離れ」への危機感もあります。

 全国茶生産団体連合会(東京)のまとめによると、緑茶の国内消費量は1980年に10万トンを超えていましたが、2021年は約7万5000トンにとどまっています。以前はほとんどの家庭に急須があり、お茶を入れて家族で食卓を囲んでいましたが、個食が広がり、飲料も多様化しました。

 こうした状況を受け、推進協議会は「海外市場の開拓は欠かせない」と、2015年の設立当初から海外市場への挑戦を検討してきました。しかし、協力する意向を示していた世界的シェフの急逝、世界に広がったコロナ禍などにより、活動は一時停滞を余儀なくされました。


世界各国のシェフも参考にするという自身の著書を手にするシャルティエ氏

 逆風の中でも海外市場への道を探り続け、世界の著名レストランに名前が知られるシャルティエ氏に協力を打診。八女に招いて品質を確かめてもらい、今回のコラボが実現しました。

100年先に向けた挑戦

 八女茶は1423年、栄林周瑞禅師が現在の八女市黒木町で、明国から持ち帰った種をまいて製法を伝えたのが始まりとされています。

 福岡県茶業振興推進協議会によると、八女や近郊を主要産地とする県内の荒茶生産量は1780トン(2019年)と、全国首位の静岡県(2万9500トン)に遠く及ばず、シェアは2%ほど。八女は「量ではなく品質で勝負する産地」(江島氏)といいます。


覆いで日光を一時遮るなど、手間暇をかけておいしさを追求している八女茶の生産現場(提供:八女伝統本玉露推進協議会)

 八女一帯で主に作られている玉露は、わらで作った覆いで日光を一時遮るなど、甘くてまろやかな味に仕上げるため、生産者が手間と時間をかけて作業しています。八女市農業振興課の担当者は「今回のプロジェクトが起爆剤となりブランド力が高まれば、生産者や後継者のやりがいにもなる。100年先の産地の維持・発展につなげたい」と、ボトリングティーによる海外戦略に期待しています。



 ボトリングティーは4月に完成させ、シャルティエ氏が世界の著名レストランに紹介して販路を広げていく方針です。「まずは海外で重点的に取り組みたい」(広報担当者)としており、国内では将来的に、高級飲食店での提供や贈答用での販売が行われる見通しです。


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