古都・秋月の新たな風物詩に 「雛めぐり」3年ぶりに開催中

長屋門の前に登場した21段の雛飾り

記事 INDEX

  • 600体が並ぶ21段飾り
  • 飛び入り歓迎「雛並べ」
  • イベントは3月5日まで

 「筑前の小京都」と呼ばれる福岡県朝倉市秋月で、城跡や武家屋敷などに雛(ひな)人形を飾る「古都秋月 雛めぐり」が行われている。コロナ禍で中止していたため、今年は3年ぶりの開催となった。

600体が並ぶ21段飾り

 一番の目玉は、石段を雛壇に見立てた21段の雛飾りだ。江戸時代に建てられ、当時のままの場所に残る秋月城長屋門(福岡県指定有形文化財)の前にある。「人形を買う予算がない」ため、市民らに呼びかけて集まった約600体が並んでいる。


寄贈された約600体の人形が並ぶ

 秋月といえば、春の桜と秋の紅葉が知られる。雛めぐりは、閑散期となる今の時期にも城下町の雰囲気に合う催しが何かできないだろうかと、市とあさくら観光協会が2015年に始めた。

 市の担当者によると、屋外の石段での展示は九州では珍しいとのこと。観光客らは石段の前で足を止め、圧巻の雛飾りにカメラを向けている。


長屋門前の石段にずらりと並んだ雛人形


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飛び入り歓迎「雛並べ」

 石段の雛人形は展示日の朝、人の手で30分ほどかけて並べる。市や観光協会の関係者だけでなく、「人形を並べてみたい」という飛び入り参加者の手を借りて行うのも特徴の一つだ。


観光客らの手も借りて人形を並べる

 イベント初日を迎えた2月11日の午前9時半頃。「せっかくだから一緒に雛人形を並べてみませんか」という担当者の声に導かれるように、観光客ら10人ほどが地元関係者と一緒に作業に取りかかった。


一体一体、丁寧に

 福岡県春日市から娘と訪れた永島弥生さん(54)もその一人。3月3日生まれで、雛まつりへの思いは人一倍という。石段の所々に生えたコケに足を取られながらも一体ずつ丁寧に並べ、「再び日の目を見て、人形も喜んでいるみたい。こちらもうれしくなります」と目を細めた。


石段の人形に木々の間から太陽の光が差す

イベントは3月5日まで

 この時期、関係者が最も恐れているのは雨――。「春時雨」という言葉もある通り、晴れたと思ったのに、急に降り出す雨に泣かされることもあるという。


石段をそろりそろり。作業は神経を使う

 雨天時は展示が中止されるが、天候の急変で途中から雨粒が落ち始めると、大切な人形を片付ける作業に追われることになる。現地には市の関係者1人が待機しているものの、とても人手が足りない。

 そんなときはチームプレーで”窮地”を切り抜ける。「たいへんですね」「お手伝いしましょう」――。近くの店の関係者のほか、居合わせた観光客も加わり、約600体の人形を救う”人海戦術”が繰り広げられるそうだ。


飛び入りの参加も大歓迎

 近年は、イベントが広く知られるようになり、北九州市などから訪れる人も増えたという。「この時期は雨雲レーダーとにらめっこです」と担当者。「せっかく来てもらったのに『雨で見られなくて残念』という声を聞くこともあります。期間中はどうか降らないでほしい」と祈っていた。


旧戸波邸で披露される雛人形

 雛飾りはこのほかにも、旧戸波邸の武家屋敷がある朝倉市秋月博物館や、近隣の店舗など30か所以上で見ることができる。


スマートフォンに映るひな壇

 雛人形の野外展示は3月5日までの土日・祝日と3月3日、雨天時を除いて午前10時~午後4時に行う。



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