「ゲームは1日1時間」 高橋名人に香川県のゲーム規制条例案について聞いた

記事 INDEX

  • 名言は福岡で生まれた
  • 行政が規制するのは反対
  • 子どもたちの可能性を育もう

 「ゲームは1日1時間」。子どもの頃、この"呪文"に苦しめられた30~40歳代の人も多いはず。生みの親は「高橋名人」こと高橋利幸さん。ゲームソフトメーカー「ハドソン」(当時)の元社員で、ファミコンブームの立役者の一人です。この言葉が生まれたのは1985年7月、福岡市東区で開催されたイベントでのことでした。名言の誕生秘話、そして香川県議会で議論されている「ネット・ゲーム依存症対策条例案」について聞きました。


高橋利幸さん

1959年生まれ。北海道出身。ハドソン社員時代にテレビゲームの実演をしながら全国を行脚する「全国キャラバン」で高橋名人として一世を風靡。コントローラのボタンを1秒間に16回押す「16連射」が代名詞となる。公式ブログ「高橋名人16連射のつぶやき」。


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「ゲームは1日1時間」は福岡で生まれた


ファミコン世代のレジェンド高橋名人

――「ゲームは1日1時間」が生まれたのは福岡市でのイベントだったそうですね。

 この言葉が生まれたきかっけは1985年7月26日、福岡市のダイエー香椎店(現在は閉店)で開かれた「全国キャラバン」でした。任天堂が「ファミコン(ファミリーコンピュータ)」を発売してちょうど2年。歴史的なゲームソフト「スーパーマリオブラザーズ」はこの年の9月に発売されます。全国キャラバンはファミコンブームの夜明け頃に開催されました。

 全国キャラバンはファミコンの実演をしながら、全国の商業施設などを巡るイベントです。キャラバン隊は二手に分かれ、私は鹿児島県から北上していきました。回を重ねるごとに来場者が増え、ダイエー香椎店には多くの保護者も来ていました。ゲームをする子どもにとって、一番の難敵は財布のひもを握っている「お母さん」ですよね。当時は「ゲームセンターは不良のたまり場」と言われていました。「ゲーム=不良」というイメージを払拭する必要がありました。

 そこでとっさに「テレビゲームがうまくなりたいなら、1時間だけ集中してやろう。あとは外で遊ぼう」というようなことを言いました。それがのちに「ゲームは1日1時間」となっていくのですが、大きくうなずく保護者をみてほっとしました。


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――当初は「ゲームは1日1時間」ではなかった?

 そうです。福岡のイベントにはおもちゃ問屋などの関係者も来場していましたが、彼らがハドソン本社に「ゲームを売っている会社の社員が、ゲームをするなと言っている」と告げ口し、翌日の役員会でも取り上げられたそうです。ファミコンがこれから盛り上がっていく時期でしたから、私の発言は売る側にとっては面白くないわけです。役員会が開かれた夜、社長から電話がありました。でも社長は「将来のためにはゲームを健全な方向に持っていきたい。会社としてゲームばかりしないように訴えていく」と言うのです。そして標語をつくるように指示され、「ゲームは1日1時間」を含む五大標語をつくりました。

1.ゲームは1日1時間
2.外で遊ぼう元気よく
3.ぼくらの仕事はもちろん勉強
4.成績上がればゲームも楽しい
5.ぼくらは未来の社会人

――そういう経緯でしたか。

 イベントで子どもに配る名刺にも標語を書いていました。ゲームは悪者ではないと分かってもらいたかったのです。

 しかし、子どもからは不満の声もありました。当然ですが、「1時間ではクリアできない」という声が出てきます。「ゲームは1日1時間」はゲームが上達するためのメッセージで、イベントでは「うまくなりたいなら自分が集中できる時間で練習しよう。それが上達する秘訣だ」と言っていました。


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