鮮やか!夏のコントラスト 豊前市の如法寺でハスの花が見頃
福岡県豊前市の国指定史跡・如法寺(ねほうじ)の境内で、約10種、およそ80鉢のハスが花をつけ、参拝者らが緑の葉との美しいコントラストを楽しんでいる。
遅咲きが見頃に
如法寺は求菩提山(くぼてさん)の修験道にゆかりの深い古寺。本堂に続く大門の両脇には、平安時代に造られたとされる2.8メートルほどの一木造りの金剛力士立像(県指定有形文化財)がそびえる。
地元では「ハス寺」の愛称で呼ばれる如法寺。吉野心源住職が30年ほど前に京都にある黄檗宗の本山のハスを株分けし、地元住民らが鉢を寄贈したのがはじまりという。水替えや草むしりなど、住民らによる手入れも行き届き、寺の夏の風物詩として定着した。
鉢の直径は70センチほど。ハス園の入り口には鹿よけの扉が設置されており、扉を開けて自由に入り、間近にハスの花を見ることができる。
寺によると、今年は例年より半月ほど開花が遅れたそうだ。現在は早咲きの花がおわり、遅咲きのハスが見頃を迎え始めている。
ハスの花とクモ
四方を木々に囲まれたハス園。水を張った鉢に落ちた花びらが、頼りない小舟のように、風まかせで水面をゆらゆらと揺れていた。
静寂をかき消すようにアブラゼミやニイニイゼミの鳴き声がこだまする。花の周りをひらひらとチョウが舞い、その影がハスの葉に映し出されていた。
天日干しされた和傘のように放射状に広がるハスの葉を下からのぞいてみると、小さなクモの姿を見つけた。
ハスの花とクモ――。芥川龍之介の「蜘蛛(くも)の糸」を思い出した。「ある日の事でございます。御釈迦様(おしゃかさま)は極楽の蓮池(はすいけ)のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。」ではじまる児童文学だ。
御釈迦様が蜘蛛の糸を垂らしたという蓮池の真下。地獄の底にある血の池から抜け出そうと糸をのぼる罪人・カンダタの目には、こんな情景が映っていたのだろうか。
高さ2メートルを超えるハスの花や葉。その隙間から見える夏の空を眺めながら想像を膨らませる。つかの間、厳しい暑さを忘れることができた。
ハスの花はお盆すぎまで楽しめるという。早朝に開き、午後には閉じるため、寺は午前中の来訪をすすめている。