地域の暮らしを乗せて20年 住民の絆で走る福祉バスみどり号

買い物で「みどり号」を利用する住民たち

 福岡県筑後市の下妻校区で、住民らでつくる協議会が運営するコミュニティーバス「みどり号」の運行が始まって今年で20年を迎えた。運営費は住民の会費や寄付金と、市の負担で賄っており、同様の形態のバスは現在、市内の8校区・行政区に広がっている。こうした取り組みは全国でも珍しく、市や住民らは「お年寄りが買い物や病院に出かけられるよう地域の絆でバスの運行を続けたい」としている。

会費や寄付金を運営費に

 下妻校区は、市中心部から南西に5~6キロほど離れた田園地帯。1994年、同校区を走っていた路線バスが廃止され、市は96年、校区と中心部を結ぶ福祉バスを試験的に運行したが、利用者が少なく、経費負担が大きいとして3か月で断念した。

 2002年、当時の市長が10人乗りワゴン車を無償貸与し、住民が中心となって運営することを校区の行政区長らに提案。校区内の自治会ごとに年間1人2000円の会費や寄付金を集め、運転手の確保や運行コースの設定などを進めた。

 行政区長や福祉会役員、民生委員、小学校長らによる「しもつま福祉バス運営協議会」が発足し、03年7月、「みどり号」が誕生した。翌月には古島校区でも「のらんの号」の運行が始まった。

 運行日は火曜を除く平日の4日間で、校区をAコース(月、木曜)とBコース(水、金曜)に分け、1日各3便が中心部や商業施設、医療機関などを回る。会費を納めた住民は無料で乗車できる。

 市や同協議会によると、会費と寄付金は毎年200~300件ほどあり、金額は50万~90万円前後になるという。運営費の半分にそれらを充て、残りは市が賄ってきたが、20年度からはガソリン代を含め運営費の約6割を市が負担している。22年度は約160万円のうち協議会が約62万円を負担し、運転手4人の報酬などに充てた。

車内で楽しい時間を共有

 みどり号は現在、約50人が利用登録しており、「バスがなかったらどこにも行けない。病院や買い物に行くのに助かっている」「バスでは他の乗客の皆さんと楽しい時間を過ごせる」などと好評で、満席になる日も多い。全国から視察も相次いでいる。

 協議会の松竹卓生・事務局長(69)は「地域の足を守ろうという共通の意識を多くの住民が持っており、バスを利用しない人からの寄付や会費の支払いも多い。住民の協力がないと運転手の確保が難しく、市外でこうした“筑後方式”を実行した例はほとんど聞かない」と話す。


記念式典で運行開始20年を祝う住民たち


 バスを運行する8校区・行政区への市の負担は年間計約600万円。市都市対策課の担当者は「下妻、古島両校区が頑張ってきたおかげで、画期的な取り組みが市全域に広まった」としている。


 10月21日に開かれた運行開始20年を祝う記念式典で、協議会の力武忠晴会長は「みどり号は30年に向けて、地域の皆さんの足として走り続けます」と力を込めた。


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