手作り前掛けで石仏が鮮やかに 織物の街・筑後で伝統を学び、絆を深めるイベント
カラフルな前掛けを着けて、ずらりと並ぶ石仏。福岡県筑後市で、久留米絣(かすり)をはじめ地域の織物工場などで出た端切れを利用して前掛けを作り、石仏に着けるイベントが開かれた。
「こんなに鮮やかに着飾ってもらったのは初めて。顔も明るくなってきたごたる」と喜ぶ地元のお年寄り。石仏が並ぶ一角は新たな撮影スポットにもなっている。
久留米絣や久留米縞織(しまおり)の新ブランド「シマオリチェック」など、織物の産地として知られる筑後市。「ここは昔から続く織物の街ですよ、と地元の子どもたちに関心を持ってもらうきっかけになれば」と筑後青年会議所が企画した。端切れは、地域の織物メーカー10社から提供を受けた。
イベントは9月4日に行われ、地域住民ら約70人が参加。地元の寺の住職から四国八十八寺にちなむ石仏の由来などを聞いた後、端切れを丁寧に縫って前掛けを作った。その後、それぞれ88体の石仏が並ぶ久富、蔵数、尾島の3地区にバスで向かった。
娘らと参加した大津沙織さん(38)は「初めての裁縫体験に子どもたちも大喜びです。こういう機会に、地元の石仏のいわれや歴史を知ることができてよかった」と話し、石仏に前掛けを着けようと手を伸ばす娘の様子をやさしい表情で見つめていた。
同会議所の池田大悟さん(39)によると、筑後市には水害防止や無病息災を願う地蔵盆などがあり、石仏に親しみ、大切にする風習が受け継がれてきたという。普段から石仏を見守り、清掃している久富地区の辻八重子さん(77)は「お彼岸を前に、鮮やかな姿になってよかった。きっと喜んでおられると思いますよ」と目を細めた。
夕暮れ時――。熊野神社の境内では、地元のアマチュアカメラマンが早速、カラフルな石仏が並ぶ様子を写真に収める姿が見られた。