筑後織の「のこりもの」であったか小物 九大生がデザイン
九州大芸術工学部(福岡市南区)の学生たちが、「綿入れはんてん」の製造工程で出た端切れと余った綿を使ったマフラーなどの商品をデザインし、福岡県筑後市にある筑後織の老舗「宮田織物」で販売が始まった。学生らは「ものを無駄にしないことの大切さと、筑後織の良さを若い人から年配者までに広めたい」と張り切っている。
端切れや綿を有効活用
筑後市は綿入れはんてんの一大産地で、全国シェアの9割以上を占める。九州大は、地場産業などと連携した商品デザインの開発に取り組んでおり、芸術工学部芸術工学科の学生たちは数年前から、宮田織物の工場を見学したり、製造工程で生じる端切れなどの有効活用を考えたりしてきた。
大正時代創業の宮田織物では数年前から、筑後織の反物などの製造で出る端切れを再利用し、図書館で借りた本を入れるバッグや小物に加工してきた。
冬に着るはんてんの製作では、1着あたり約70グラムの綿が残り、多くの端切れが出る。これまでは処分していたそれらの残り物を活用できないかと、学生たちが商品デザインを検討。久保田峻介さん(23)(4年)がマフラー「nucca(ぬっか)」を、田中彩生さん(23)(同)が手首や足首を温めるウォーマー「pocca(ぽっか)」を考案し、同社が製品化した。
マフラーとウォーマー
マフラーは長さ約1.2メートルで、無地の生地に柄付きの布を縫い付け、中に綿を詰めている。コートなどの中に羽織ってもかさばらず、十分な暖かさを保てるよう綿の量を考えた。「ぬっか」は「あたたかい」という筑後地方の方言から名付けた。9月から同社の通信販売で1着8580円で取り扱っており、好評という。
ウォーマーは、はんてんの袖付近から出る余剰部分を活用。本体の布やひも、綿が別々に入ったキットで販売し、購入者が簡単な作業で仕上げられるようになっている。11月下旬、同社で開かれた「はんてんフェア」で1セット1500円で販売した。当面、同社のイベントなどで販売した後、通信販売での取り扱いを検討する。
久保田さんは「マフラーは年代に関係なく着用してもらえるデザインにした。軽くて着け心地がいいので、はんてんや筑後織への関心が広がってほしい」と話す。田中さんは「手首や足首を温めると、体全体がぽかぽかになる。キットから作る工程も楽しんでほしい」と期待を込める。
同社の吉開ひとみ社長は「マフラーやウォーマーは、はんてんの製造で余った糸も使っている。大学生たちのアイデアを生かし、今後も『のこりもの』の活用を考えていきたい」と話している。
問い合わせは宮田織物(0942-53-5181)へ。