「Mozuミニチュア展」開催中 小さな世界をのぞいてみよう!
記事 INDEX
- 誰かを楽しませたくて
- こびとの暮らしを想像
- 好きだから没頭できる
机の上が散らかり、生徒の会話が聞こえてきそうな教室など、日常の風景を小さな世界に表現した「Mozuミニチュア展 ようこそ、ちいさな世界へ。」が福岡市・天神の大丸福岡天神店で開かれています。福岡からスタートした巡回展。作者の「Mozu」こと水越清貴さん(25)が、会場で作品への愛情を語ってくれました。
誰かを楽しませたくて
「見てください。生活感がいいんですよ! ランドセルとか、靴の散らかり具合とか……」。会場入り口の新作「こびとの玄関」について水越さんが熱く語ります。そばには、実寸大のドアと巨大なコンセントのオブジェもあり、ミニチュア作品を見ている自分自身がミニチュアの世界に迷い込んだかのような不思議な感覚に浸れます。
展示されているのは、こびとの部屋、冷蔵庫の足元に開店した牛丼チェーン店、壁のタイルを外すと現れる風呂場といったミニチュア作品約50点です。
水越さんは東京都小金井市出身。小学生の頃はブロックで遊ぶのが好きで、やがてプラモデルに夢中になり、高校2年のときには自分の部屋をミニチュアで再現しました。「親に見せたらすごく喜んで褒めてくれたんですよ」と振り返ります。以来、たくさんの人を驚かせたいと、身の回りを“小さな世界”で表現してきました。
会場に展示している「友達の部屋」は、高校の頃に自分が暮らしたいと思っていた部屋をかたちにした作品。学習机や棚、サイドテーブル、無造作に置かれた本や漫画など様々なものが室内にあふれています。「ごちゃつき方とか、たまんないですよね」と、水越さんが興奮気味に”解説”してくれました。
作品の中で暮らす“こびと”たちの生活感や個性までもが伝わってきます。「後ろの席は机の上に漫画が出てますね。前の席の子はノートをとってまじめに勉強していそう」。続いて案内してくれたのは、通っていた高校の6分の1サイズの教室でした。
こびとの暮らしを想像
会場には、こびとたちの物語を想像しながら楽しめる作品が並びます。
浴室を再現したコーナーでは、壁のタイルが1枚はがれており、そこからのぞき込むと「こびとのお風呂」がありました。この小さなお風呂場の壁は、プラスチック板を6ミリ四方に切ってタイルに見立て、約1週間かけて貼り付けました。カビのような模様も施されて年季を感じさせ、シャワーやシャンプー容器などが並んでいます。
水越さんの自宅浴室がタイル張りで、「タイルがめくれた中に、別の世界が広がっていたらおもしろいのでは」と入浴中にひらめき、制作に取りかかったといいます。
新作「こびとの角部屋」は、大学生の一人暮らしをイメージしました。来場者がスイッチを押すと室内の照明が点灯する仕組みです。2面ある窓からは極小のテレビが見え、ニュース風に編集した映像が流れています。「ぜひ顔を近づけて、いろんな角度から楽しんでください」と水越さんは話します。
好きだから没頭できる
会場の作品は12分の1か、16分の1のスケールが基本です。水越さんによると、大きすぎず小さすぎずで、かわいらしさをちょうど表現できるサイズなのだそうです。
家具などは厚さ数ミリのプラスチック板をデザインナイフでカットして組み立て、模型用塗料で色づけします。本やポスターなどの小物は、実物を写真に撮るなどし、パソコンで加工して縮小印刷しています。
一つの作品に2~6か月を費やし、作業を始めると6~7時間は没頭しているそうです。水越さんは「好きだから続けられる。より上を目指したい」と笑顔を見せます。
水越さんは高校を卒業後、個人スタジオを設立しました。ミニチュア作品のほかにも、コマ撮りアニメやだまし絵「トリックラクガキ」の分野で活動しています。
企業とのコラボで商品パッケージのデザインを手がけたり、アニメのオープニング制作に協力したり。このほか、小学校で使う2024年度の教科書の表紙デザインも担当しました。
福岡での作品展示は12月4日まで。「会場の作品を写真や動画に撮っても楽しいですが、ミニチュアの良さは2次元では十分伝わりません」と水越さん。「撮影はちょっとにとどめ、ぜひ自分の目で楽しんで、こびとたちの生活を想像してみてください」