天神イムズが詩人・最果タヒさんとコラボ 詩に不意打ちされる体験
記事 INDEX
- 季節の到来が生活の真ん中にない感覚
- 言葉が自分を乱暴に削り、他人にも乱暴に
- 詩に不意打ちされる
福岡市・天神のイムズは8月30日まで、詩人の最果タヒさんとコラボレーションした「最果タヒ 詩のインスタレーション」を開催しています。開催に合わせ、最果さんのオンライン取材会があり、今回のインスタレーション(空間芸術)の見所、新型コロナウイルスで見えた今を聞きました。
季節の到来が生活の真ん中にない感覚
今回の企画では、最果さんは「真夏日の詩」など9編を書き下ろしました。イムズプラザには、詩をデザインした4.4メートルの立体オブジェを設置。そのほか、館内のエスカレーターや手すりなど16か所にも詩を配置しています。
――新型コロナウイルス禍で、心境に変化はありましたか。
みんなで新型コロナウイルスという共通の課題に向かい合っているような印象がありますが、感染リスクや、自粛生活・リモートワークの影響は、人によって全く異なっており、問題とすること、困ること、辛くなることがこんなにも一人一人違うんだと思い知ることが多くありました。
それでも、SNSやテレビでは物事を俯瞰(ふかん)し、「みんなの問題」として、この日々が語られています。多くの人が共感するような言葉、誰もが理解できるメッセージが求められ、「自分にしかわからないであろう気持ち」を語ることにこれまで以上に勇気が必要になっていると感じます。
でも本当は人が互いを完全に理解し合うことは難しい。それはお互いが別の人間だからです。そして、お互いの違いに気づけて、やっと、お互いを思いやれるのかなと思います。
――どういった思いで今回の詩を書かれたのでしょう。
これらの詩を書いたのは、緊急事態宣言の頃。みんなが外出を控えて、桜を見に行けないような時期でした。いつもと違い、春の存在感が「薄い」と感じていました。今回は夏のキャンペーンの依頼でしたが、今年の夏はこれまでの夏とは違うというか、季節の到来が生活の真ん中にはない感覚を持ちながら、詩を書きました。
言葉が自分を乱暴に削り、他人にも乱暴になってしまう
――SNSに関して言えば、そこでの誹謗中傷が社会問題化しています。
みんなが言っているからという理由で誰かに石を投げているのなら、その言葉はもはや自分の言葉ではありません。人を傷つける言葉を、自分の血も入れずに投げてしまっているようで、怖さを感じます。与えらえた情報や、みんなが支持する考え方に反射的に反応をして、自分がどう思うか、より、みんながこう思うから、を優先しているように感じます。
だから、他人を傷つける言葉を気軽に投げてしまうし、投げたこともすぐに忘れもします。傷つけたことを想像してないんじゃないかって。SNSは共感が大事にされます。より今のような時期は。空気を読み、自分の言葉をやめてしまうことで、言葉が自分を乱暴に削り、他人にも乱暴になってしまうのではないでしょうか。
相手の人間性を無視しているだけでなく、自分の言葉を語ろうとしない自分自身の人間性すら無視しているように感じます。
詩に不意打ちされる
――イムズのインスタレーションでは、どんなところを楽しんでほしいですか。
いろんな場所に詩が隠れていて、ぐるぐる回るだけで楽しいと思います。自分のペースで詩の中に入っていけるインスタレーションになっているので、それぞれの時間の中で、ちょっといつもと違う雰囲気のものに出会ってほしいです。
詩って、心を準備してから読むことが多いように思います。でも、ふと詩に出会うとか、詩に不意打ちされると「これは何が言いたいんだろう」と考える前にすっとなじんでしまうことがあります。詩ははっきりと「どう受け取ればいいか」を教えてくれるような言葉ではないです。でもその分、「自分はその言葉にどう思うか」だけがその場に立ち上がるのではないかと思います。そういう言葉に出会える瞬間をこうした公共の場に作ることができ嬉しいです。
夏って、ほかの季節よりも「一瞬」の感覚があります。そんな夏のように、ぱっと出会ってぱっと消えたけど、残り続ける言葉になればと思い、短いフレーズを大事にして書きました。全体は覚えてなくても、一文だけ気になるような。あまり経験したことのない言葉との出会い方になるといいなと思います。
タイトル | 最果タヒ 詩のインスタレーション |
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会期 | 7月10日(金) ~ 8月30日(日) |
時間 | 10:00 ~ 20:00 |
会場 | イムズ地下2F他、館内各所(福岡市中央区天神1-7-11) |
観覧料 | 無料 |
公式サイト | IMS SUMMER 2020 |
三菱地所アルティアムでは「最果タヒ展」
イムズ8階の三菱地所アルティアムで8月8日から、展覧会「最果タヒ展 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。」が開催されます。
今回の「詩の展示」は、読者が会場を歩き回り、空間全体で言葉を体感するインスタレーションになります。表裏に詩の断片が記されたモビールを吊るす『詩になる直前の、アルティアムは。』など、「詩になる直前」の言葉を追う体験ができます。
タイトル | 最果タヒ展 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。 |
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会期 | 8月8日(土) ~ 9月27日(日) |
時間 | 10:00 ~ 20:00 |
会場 | 三菱地所アルティアム(福岡市中央区天神1-7-11 イムズ8F) |
入場料 | 一般:400円、大学生:300円、高校生以下無料 |
公式サイト | 三菱地所アルティアム |