カルタが伝える戦争の時代 大牟田市で「兵士たちの記憶」展

戦時中に作られたカルタ

 戦地で兵士が使った武器や装備品、戦時中に作られたカルタなどを展示する平和展「兵士たちの記憶―戦場からのメッセージ」が、福岡県の大牟田市立三池カルタ・歴史資料館で開かれている。同館は「戦争の記憶や爪痕が風化しつつある中、現在の平和が多くの人々の犠牲の上に成り立っていることを知ってほしい」と来場を呼びかけている。

父が幼い娘に残したぬいぐるみ

 会場には、軍服や軍帽、軍刀のほか、水筒やガスマスクなどの装備品、日本の占領地で現金の代わりに使われた軍票、日本から戦地の兵士に送られた女優の写真のはがきセットなど約50点が並ぶ。多くは熊本県荒尾市の収集家から借りたものだ。

 「食物には心配するな。ビールもあるし、ウイスキーは山ほどあるが、とても安いのだ。安心してくれ。バナナなどは毎日、菓子も毎夜ある。何一つ不自由はないのだ。お前も金を残すことばかり考えず、もっと体を大事にせよ」


戦地に赴く列車の窓から投げ渡された象のぬいぐるみ


 終戦の1か月前にフィリピンで戦死した男性が、大牟田に残した妻と子どもに宛てた手紙の一節だ。手紙とともに展示されている象のぬいぐるみは、男性が一時帰国した後、再び戦地に赴く際、列車の窓から幼い2人の娘に向けて投げ渡したものだ。色あせたぬいぐるみは、戦後79年の歳月の重みを伝えている。遺族が同館に寄贈し、今回初めて公開された。

「どんな時代だったのか考えて」

 カルタは、「戦陣訓かるた」「兵隊サンカルタ」「南洋ウタカルタ」「銃後カルタ」「翼賛カルタ」など、子ども用にカラーイラストで作成された。

 「ススム ジャングル センシャタイ」「戦時公債 皆んなが 買はう」「三国同盟 世界の平和」など当時の世相を表した内容で、国民の戦意高揚を狙った文言が並ぶ。


展示されている軍刀や兵士の装備品など


 梶原伸介館長は「戦時中の経験を語る人は年々少なくなっている。残された生の資料を見て、当時がどんな時代だったのか考えてほしい」と話している。


 9月23日まで。入場無料。月曜日(祝日の場合は翌日)と8月29日は休館。問い合わせは同館(0944-53-8780)へ。


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