目の前に圧巻!!の光景 都心部にある福岡造船の進水式が話題

進水直前のタンカー。住宅に押し迫るような迫力

記事 INDEX

  • 天神のそばに造船所
  • 感嘆と感激の見学者
  • 一緒に見守る”瞬間”

 福岡市中央区にある福岡造船は、建造したタンカーの進水時に造船所内を一般の人たちに開放している。商業施設が立ち並ぶ天神地区のそばで目にできる圧巻のシーンが話題になっているようだ。会社の公式サイトで調べると、進水の日が間近に迫った新造船があり、見学も可能だという。カメラを手に出かけてみた。

天神のそばに造船所

 1947年に創業し、漁船を専門に手がけていた福岡造船。200カイリ規制に伴う水産業の縮小で、漁船の需要が減ったことなどもあり、1966年頃からタンカーをはじめとする商業用船舶に方向転換した。現在は、ケミカルタンカーを中心に、長崎市の長崎工場と合わせて年間8隻のペースで建造している。海外からも高い技術力が認められ、3年以上先まで仕事が埋まっているそうだ。


天神から近い沿岸部で操業する福岡造船


 造船所は、福岡都市高速の荒津大橋のたもとに位置している。行き交う船や車を借景に、大型船の建造が進められる様子が評価され、2005年度の福岡市都市景観賞を受賞した。都市高速を走る車の窓から、ビル街のすぐそばで操業している造船所の存在に気づき、驚く人も少なくないという。


福岡造船のすぐそばに荒津大橋が架かる


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感嘆と感激の見学者


進水の見学に訪れ、開門を待つ人たち


 造船所が公開されたのは9月20日。進水予定時刻の30分前に門が開放され、カメラを手にした大勢の人たちが巨大な船のすぐ近くまで案内された。この日、進水するのは、欧州の海運会社から発注した全長146メートル、幅24メートル、総計約2万トンのケミカルタンカーだ。


進水の直前、盤木を取り外す作業員


 見学者を迎え入れる時間帯は、進水準備の最終段階でもあるため、所内は人の動きが慌ただしく、空気が張り詰めている。船体を支える「盤木」と呼ばれる木材を、作業員たちがハンマーを使って船底から外していく様子が間近で見られた。


そびえ立つ”赤い壁”が動き出した


 通常の進水式では、依頼主の合図で船が海へ向かい出すが、この日は出席がなく、造船監督が代行を務める「進水作業」として行われた。午前11時4分、所内に響き渡るベルの音に続き、軍艦マーチが流れる中、そびえ立つ”赤い壁”が歩くようなゆっくりとしたスピードで動き始めた。目の前の船体は、まもなく自転車ほどの速さに、さらに車くらいの勢いになり、滑らかに海へ入っていった。


大きな生き物のように宙を舞う紙テープ


 くす玉が割られ、風になびく紙テープ――。長さ30メートルを優に超しているであろう紙テープが、解き放たれた巨大生物のように宙を泳いでいた。間近で繰り広げられる迫力のシーンに、見学に訪れた人たちは「おーっ」と感嘆の声を上げ、手を頭上に伸ばして盛んに写真を撮っていた。


「感激しました」と横光さん


 福岡県太宰府市から訪れた横光悦子さん(67)は、船が遠く陸を離れた後もしばらく、スマートフォンを向けていた。「感激しました。最後は新幹線のように速かったですね。本当に来てよかった」と興奮気味に話してくれた。造船所によると、この日の見学者は約450人だったそうだ。


一緒に見守る”瞬間”

 「子どもや地元の人に、船や海に親しみをもってほしい」という思いから、福岡造船はかねて、進水式などに合わせて所内を一般開放している。近隣住民らが「そろそろ完成かな」と心待ちにし、新造船が海に浮かぶ瞬間を一緒に見守る”イベント”として地域で親しまれてきたようだ。


望遠レンズで切り取ると、巨大な船が住宅に迫り来るように見えた


 造船所が昨年、SNSでの発信を始めたこともあって、最近では遠方から訪れる人も増えたそうだ。SNS上では「すごい迫力」「感動した」といった投稿が飛び交う。多いときには1000人近くが進水式の見学に訪れるという。


福岡市の中心部にありながら、迫力ある進水式が見られるスポットとして話題に


 この日、陸を離れた船は、これから洋上で内部の部品などを取り付ける艤装(ぎそう)の工程に入る。2025年2月に依頼主に引き渡され、世界の海へと旅立つ予定だ。


2025年2月の完成に向けて洋上での作業がなお続く


 造船所では、12月頃に予定されている次回の進水式に向けて、新たな船体がまたこれから組み立てられていく。



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