"大牟田の味"がするお土産を 地元素材でキャラメルを開発中

開発中のキャラメルを手にする冨山さん

記事 INDEX

  • オーム乳業の生クリーム
  • まちを”リノベーション”
  • みんなに好かれる商品に

 福岡県大牟田市の魅力が伝わる新たな土産品を作ろうと、西鉄大牟田駅前でカフェを運営する冨山博史さん(41)が、地元の生クリームを使ったキャラメルの開発に取り組んでいます。12月以降の販売を目指しており、商品化に必要な資金の一部を募るクラウドファンディング(CF)には、200人近い支援者からの寄付が寄せられています。

オーム乳業の生クリーム

 「大牟田の人が給食の牛乳で慣れ親しんだ味。クリームは特においしく、プロにも評判です」。冨山さんは、駅前広場で営むカフェ「hara harmony coffee」で、味の決め手となる地元・オーム乳業(大牟田市)の生クリームをみせてくれました。


オーム乳業の「ピュアクリーム」(中央)

 オーム乳業は、大牟田市や熊本県荒尾市の酪農家が出資する「大牟田牛乳」として1934年に創業。絞りたての生乳にこだわり、牛乳やクリーム、チーズといった乳製品を生産しています。冨山さんのキャラメルは、同社が飲食店向けに販売する生クリーム「ピュアクリーム」を原料に用い、砂糖や水あめなどと一緒に煮詰めて作ります。

 カフェでは、この生クリームを使ったフルーツサンドが人気です。フワフワのパンの間に、地元の青果店から仕入れたフルーツと、ミルク感たっぷりのクリームを挟んで提供しています。


ショーケースに並ぶ人気のフルーツサンド

 「フルーツサンドを楽しみに大牟田に立ち寄ってくれる人も増えた。クリームのおいしさが伝わるお土産を作って、大牟田の味を遠方の人にも届けられないだろうか」と冨山さんは考えました。

 カフェは、広場にモニュメントとして展示されていた路面電車を改装した店舗で、板張りの床、シートやつり革などが当時のまま残るレトロな雰囲気です。大牟田市が2020年、車両を活用した駅前のにぎわい創出策を公募し、冨山さんらが事業者に選ばれ、21年3月末に店をオープンしました。


駅前にある路面電車。車内にカフェが入る

 店の人気メニューはサンドのほかに、自慢のコーヒーも。どちらも市民に愛されつつ19年に営業を終えた老舗喫茶店「コーヒーサロンはら」の"味"で、元店主と親交のあった冨山さんがコーヒーのレシピを教わり、サンドはアレンジを加えて受け継いでいます。

カフェについての記事はこちら▼



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まちを”リノベーション”

 冨山さんは同市出身。大学卒業後は大手おもちゃ販売店でマネジャーも務め、経営管理などを学びました。地元に戻ってからは、実家の不動産業と飲食業に携わっています。

 自社が所有する物件の空きテナント対策として、リノベーションなどを手がけていましたが、10年ほど前から地域の活性化に取り組むようになりました。


住民らにもリノベーションに参加してもらい、店やまちのファンを増やした(冨山さん提供)


 炭鉱で栄えた大牟田ですが、閉山後は人口流出に歯止めがかかりません。空き家や空きビルが増えるばかりで、冨山さんは「自社物件のことだけ考えてもだめ。子どもたちが将来、地元で何かを始めたいと思えるようにしなければ」と話します。

 14年、空き店舗再生や起業支援などに取り組む会社「大牟田ビンテージのまち」を設立しました。同社は「hara harmony coffee」の運営をはじめ、市や商工会議所などと連携して商店街の再生などにも挑んでいます。


元美容室をリノベーションしたシェア店舗

 24年1月には元美容室を改修して、飲食店が日替わりで出店したり、間借りしたスペースで雑貨を販売したりできるシェア型の共同店舗を開設しました。

みんなに好かれる商品に

 「キャラメルなら子どもから大人まで、みんなに好かれる商品になると思うんです」。路面電車内のカフェで、冨山さんが試作品のキャラメルを勧めてくれました。


試作品のキャラメル

 試食したのはプレーン味。最初はさっぱりとした味わいですが、すぐに口の中で溶け始め、クリームの濃厚さが一瞬で広がりました。プレーン味のほかにも、4種の味を加える予定で、市内の青果店などから仕入れたミカン、抹茶、ナッツや、カフェ自慢のコーヒー味をそろえる考えです。

 商品名は、地元の特産品、商店や企業などとコラボして、多彩な魅力を届けられるようにと「&(アンド)キャラメル」と付けました。

 9月15日からCFサイト「CAMPFIRE」で支援を募ったところ、10月23日までに約180人から100万円近くが集まりました。CFは27日までで、集まった資金は商品のパッケージデザインや食品の成分検査費用などに充てるそうです。


「キャラメルにも合いますよ」と、カフェでコーヒーを淹(い)れる冨山さん

 現在は完成品の食感を最終調整している段階で、CFの返礼品発送が終わる12月以降の一般販売を目指します。

 冨山さんは「お土産として誰かに渡した際、このキャラメルを通じて、大牟田のことを感じてもらえたらうれしい」と期待しています。



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