国重文・芦屋釜の収蔵展示施設が開館 記念の特別展を開催中
茶の湯釜の名品・芦屋釜を紹介する福岡県芦屋町の文化施設「芦屋釜の里」で、町が購入した国重要文化財「芦屋霰地真形(あられじしんなり)釜」を収蔵・展示する新たな施設が11月1日に開館した。記念展として「芦屋釜六〇〇年の旅~室町から現代へ~」が始まり、茶釜の最高峰の一つとされる作品が披露されている。
最高峰の一つ「芦屋霰地真形釜」
同施設の新郷英弘館長によると、国内には茶釜の国重要文化財が9点あり、うち8点が芦屋釜。これらの中で7点は東京、京都の博物館などや九州国立博物館(福岡県太宰府市)が所蔵している。残る1点が芦屋霰地真形釜で、長く所在不明だったが、県外の個人が所有していることが分かり、2020年に町が2億7500万円で購入した。
口径15.2センチ、高さ20.2センチで、室町時代の作とされる。胴部全面に、粒状の細かな突起を浮かび出させる精緻(せいち)な装飾の霰文が施され、胴の周りの羽もほぼ完全に残っている。
町は釜を購入後、九州国立博物館に保管してもらい、総工費約6億円で新施設を建設。約450平方メートルの鉄筋コンクリート平屋で、展示室(約57平方メートル)や収蔵庫(約30平方メートル)などを備える。3月に完成し、収蔵・展示に適した内部の空気環境を整えるなどして開館に向けた準備を進めてきた。
茶室をコンセプトに掲げており、展示室を茶室に、通路や庭を茶室に続く露地に見立てて、茶の湯の風情を感じられる空間にした。前庭は石畳と白玉の砂利で遠賀川を表現した。
名品の数々を12月27日まで展示
記念展では、新展示室で芦屋霰地真形釜のほか、九州国立博物館所蔵で南北朝期や江戸期に制作された2点、芦屋鋳物師の末裔(まつえい)である博多鋳物師による博多釜2点など古作釜計9点を展示。既存の展示室では、芦屋釜復興の取り組みの中で町が養成した鋳物師による芦屋釜など、現代の釜計13点を並べている。
新郷館長は「室町時代の美意識が残る名品をぜひ見ていただきたい。将来はほかの7点の重文も生まれ故郷の芦屋で展示したい」と話している。12月27日まで。月曜休館。入館料は18歳以上300円、小中高校生100円。問い合わせは芦屋釜の里(093-223-5881)へ。