求む!社会人経験者 福岡県警が採用試験に「専用枠」を新設
記事 INDEX
- 転職組が活躍!
- 教養試験は不要
- 握力基準も緩和
福岡県警は2025年度の採用試験から、九州・山口・沖縄で初となる社会人枠を設ける。試験内容を工夫し、公務員試験対策として負担が大きいとされる「教養試験」に代えて、民間企業の選考でも広く使われている適性検査「SPI3」を導入。受験者数が10年前から6割減と大幅に落ち込む中、試験対策への負担を減らすことで多様な人材の確保を目指す。
転職組が活躍!
「仕事をしながらの公務員試験対策は大変だった」。県警警務課の松下隆係長(39)は振り返る。
大学卒業後、電子部品メーカーに就職。営業職として3年間働いたが、やりがいを感じられず、夢だった警察官への転職を決意。勤務を続けながら、仕事を終えた後のわずかな時間や休日を活用して、試験勉強と、ランニングや腕立て伏せ、腹筋といった体力トレーニングを重ねた。
2011年に採用され、交番勤務などを経て、現在はDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に取り組んでいる。松下係長は「安心・安全に直結する仕事で、やりがいを感じている。公務員試験対策が不要なのは、県警を受験する理由の一つになると思う」と話す。
県警では松下係長以外にも、システムエンジニアから県警のシステム担当に、臨床心理士から採用センター担当になるなどの転職組がおり、県警警務課の平田恵三・統括管理官は「警察の業務は幅広く、それぞれの能力や経験に応じた役割を見いだして活躍している」と話す。
教養試験は不要
県警によると、これまでの採用は「大卒程度」、「高卒程度」、語学や情報工学などの「専門捜査官」という三つの枠で実施してきた。24年度の受験者数は1551人で、14年度の4194人から6割以上も減った。少子化や民間企業との人材の奪い合いで受験者が減る一方、複雑化する治安課題に対応できる多様な人材が求められている。
そこで県警は採用試験の内容を見直し、これまで新卒者と同じ試験を受けていた社会人経験者について別枠の試験を新設。「社会人経験2年以上」を条件に、年齢制限も30歳以下から35歳以下に引き上げた。
また、受験のハードルを下げるため、国語や数学、自然科学などを問う教養試験を廃止し、言語や数学の処理能力を調べたり、ストレス耐性などを検査したりするSPI3を導入。民間との併願を予定する転職希望者も応募しやすくなることが見込まれる。22~24年度の受験者のうち転職者の割合は平均5%程度にとどまっており、新たな受験者層の掘り起こしを狙う。
25年度の採用予定者244人のうち社会人枠で16人を採る予定だ。社会人枠は茨城、兵庫の両県警が導入しており、神奈川、静岡の両県警でも25年度から新たに取り入れるという。
握力基準も緩和
体力に不安がある人が受験を避けてきた可能性もあるため、体力検査の一つ「握力」の基準を全ての採用枠で引き下げる。男性は左右平均45キロ以上から35キロ以上に、女性は25キロ以上から20キロ以上にそれぞれ緩和。緩和しても、この基準をクリアしていれば、採用後の鍛錬で警察官に求められる体力が身につくと見込まれるうえ、他県警と比べても基準が高かったという。
「体育会系の職場」という偏った印象も変えようと、警察官ではない39歳の行政職員の男性が体力検査に挑戦してクリアする様子をまとめた動画も作成しており、県警のウェブページで近く公開する予定。平田統括管理官は「体力に自信がなかった人も第一線で活躍しており、安心して受験してほしい」としている。