還暦すぎても動画投稿で社会とつながる 「シニアユーチューバー」が活躍中!
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記事 INDEX
- 若者だけのものじゃない
- 肩肘張らず、ありのまま
- シニアのリアルな生活を
SNSを自在に使いこなすのは若者だけではない。シニア世代でも、趣味や日常生活の動画を投稿して楽しむ「ユーチューバー」が活躍している。
肩肘張らず、ありのまま
福岡市早良区の岡田昭子さん(62)は、2020年4月にユーチューブに開設したチャンネル「かんれきガールのトライ&エラー」でソロキャンプなどの様子を発信し、登録者が2万7000人を超える。
4月末に投稿した83件目の動画では満開の桜の下にテントを張り、たき火で作ったポトフを味わった。炊き込みご飯が生煮えになる「エラー」もありのまま報告。前日の晩ご飯の残りで料理を作るなど毎回肩肘張らずキャンプを楽しみ、動画の最後は「次は何をしようか」のセリフで締めくくる。
岡田さんは元小学校教諭で、教え子から定年後について聞かれた際に「ユーチューバーになろうかな」と答えたことがきっかけだった。コロナ下のアウトドア人気もあってか、広告収入を得るための条件の一つ「登録者1000人以上」を数か月でクリア。現在は「キャンプ場使用料と道具の購入費を払うと少し余る程度」の収入があるそうだ。
撮影用の機材はスマートフォンと三脚、編集用のタブレット端末のみ。次女の夫(28)が動画に詳しく、「1カット8秒以上撮っておくと後で編集しやすい」などと助言してくれている。
登録者は40~60代の女性が多く、「見ると元気になる」などのコメントが寄せられている。岡田さんは「退職すると社会との接点が減る。投稿を通じて全国の人とつながることができます」とほほえむ。
シニアのリアルな生活を
日々の生活をユーチューブで報告する人もいる。福岡県久留米市の田中ひとみさん(62)は昨年1月に開設したチャンネル「シニアライフ senior life 60代一人暮らし」で食事風景をライブ配信している。冷凍食品で夕食を済ませたり、コンビニの新商品を試したりと気楽な姿が好評だ。
田中さんはこれとは別に、せっけんに彫刻を施す「ソープカービング」の講座などのチャンネルも持ち、7万人以上が登録している。シニア向けチャンネルを新たに設けたのは「同世代のリアルな生活を知りたい」とのリクエストがあったためで、「シニアならではの関心事に同世代として応えたい」と説明する。
「NTTドコモ モバイル社会研究所」の2021年1月の調査によると、60代の5割以上がユーチューブを視聴し、動画を投稿したことがある人は男性3.5%、女性2.9%だった。
ニッセイ基礎研究所研究員の広瀬涼さんは「60代、70代はウィンドウズ95の発売を30~50代で体験した世代で、日頃からネットに親しむ人は少なくない。ユーチューブはニッチな情報の発信に適しており、シニアだからこそ伝えられる情報も求められるのでは」と話す。
コンテストに全国から300点
65歳以上から動画を募る「R65全国どきTuberコンテスト」の表彰式が3月に行われた。全国から約300点の応募があり、出演部門では性別変更した経緯を紹介した67歳の小百合さん(愛知県)、撮影部門では猫との生活を記録した80歳のひろちゃんさん(静岡県)がグランプリを受賞した。
応募作品は、コンテストの公式サイトで公開中。久留米市の寺崎明美さん(81)が2019年にネパールを旅行した時の写真を約5分間の動画にまとめた作品もある。寺崎さんは「アプリを使えば動画作りは非常に簡単。文字や音声、音楽も自由に入れられて楽しいし、友人や家族に送ると喜ばれますよ」と勧める。
コンテストはシニア向けの出版や広告を手掛ける「ソーシャルサービス」(東京)が主催し、今年も実施予定という。事務局の大門孝司さんは「動画作りを通じてデジタル機器に親しんで」と呼びかける。
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