遊具や家具、雑貨にも ニーズに合わせて変幻自在の「進化形段ボール」
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記事 INDEX
- 丈夫で軽くお手頃
- 「可能性は無限大」
- 野外でも大活躍!
包装材でおなじみの段ボールが進化し、家具や遊具、雑貨などの素材として注目されている。丈夫で軽く、加工しやすくて、値段もお手頃。リサイクルできて環境に優しいのも魅力だ。
「可能性は無限大」
福岡県行橋市に昨春開園した「はぴねす保育園」には、段ボール製のキリン形遊具が6基ある。1基3600円で1.6キロと軽く、元気いっぱいの園児たちが1年間またがって遊んでもきれいなままだ。代表の三宅葉子さん(55)は「子どもたちに大人気の遊具。想像以上に丈夫でびっくりしました」と話す。
この遊具を作っているのは、同市にある創業60年の「大国段ボール工業」だ。遊具のほか、ベッドや机、椅子、猫用爪研ぎなど約50種類を製造販売している。
2代目社長の寺沢一光(かずあき)さん(67)によると、開発のきっかけは2008年のリーマン・ショックだった。打撃を受けた地元企業からの受注が4割減り、「箱以外の使い道を見つけて、販路や客層を広げよう」と発奮した。
息子2人が幼かった頃に段ボールで滑り台や学習机などを作った経験を生かし、特殊な機械を使って紙の厚みや形状を工夫することなどで強度を高めた。0.1ミリ単位で加工できるレーザーカッター機も導入した。
2020年春にはみやこ町の依頼でコロナ感染予防のための段ボール製間仕切りを作り、ほかの自治体や病院、銀行などからも注文があった。プラスチック削減につなげようと、県やクリーニング業者と連携して、ハンガーの開発にも取り組む。
寺沢さんは「段ボールには無限の可能性がある。これからも常識を超えた商品を生み出したい」と意気込む。
野外でも大活躍!
宗像市に工場がある「アースダンボール」(埼玉県)は、立体パズルやフライングディスク、ペン立て、貯金箱などが手作りできる段ボールキット約30種類をインターネットで販売している。
簡易調理器「エコソーラークッカー」(1378円)は、段ボールの内側に銀色のアルミフィルムが張られ、太陽光で湯沸かしや炊飯、蒸し料理などができる。使わない時は折りたたんで収納する。「キャンプや災害時にも使えますよ」と担当者は勧める。
筑後市にある創業107年の「九州ダンボール」は昨年10月から、生活雑貨の販売などを手掛ける「伊藤忠リーテイルリンク」(東京)などと共同で組み立て式家具ブランド「playbar(プレイバー)」を展開している。ロッキングチェアやデスク、収納ラック、パーティション、猫用ソファなど12種類あり、4928~9878円だ。
環境にもやさしい優等生
段ボールは、災害時に避難所のベッドや間仕切りとして役立ち、東日本大震災以降注目が高まった。
全国段ボール工業組合連合会(東京)によると、段ボールの生産量は近年、ネット通販の拡大などを背景に増加傾向にあり、昨年は過去最高の146億3700万平方メートルに達した。家具など「包装用以外」の用途も増えつつあり、昨年の消費量は1億5000万平方メートルと2015年の1.4倍となった。
段ボールは95%以上が回収され、その90%以上が新しい段ボールの原料となる。連合会の担当者は「不要になったらすぐ資源にできるリサイクルの優等生」と強調する。
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