地域をつなぐ楽しい居場所に まちの「駄菓子屋」役割広がる


記事 INDEX

  • 友だちと一緒に宿題
  • 10年ぶりに店を再開
  • 商店街ににぎわいを

 駄菓子屋は、いつの時代も子どもたちが集まる場所だ。近年は、勉強スペースや地域の交流拠点など、役割を広げる店も登場している。

友だちと一緒に宿題

 12月上旬の夕方、福岡市早良区のマンション1階にある駄菓子屋「エル・パライソ」に、小中学生が集まっていた。

 ガムやアメ、スナックなど約120種類の菓子を販売するだけでなく、テーブルと椅子があり、勉強もできるのが店の特徴だ。近くの高取小6年、白石大雅君(12)は「好きなお菓子を買えて、友達と宿題ができるのが楽しい」と話した。


勉強スペース(奥)が設けられているエル・パライソの店内

 店は以前は製茶販売店だったが、18年前に店主の久保田勝正さん(61)が駄菓子を置き、子どもが集まるようになった。建物の老朽化で今年5月にマンションに建て替えられたのを機に、「子どもにとってより居心地のいい場所に」と改装。スペイン語で「パラダイス」を意味する店名に変更した。


エル・パライソの店主・久保田勝正さんと妻の久香さん

 平日と土曜の夕方に営業し、週に数回、大学生ボランティアが勉強を手伝う。改装から半年で延べ740人が勉強スペースを利用。国内やパラグアイで子どもの教育支援などを行うNPO法人「ミタイ・ミタクニャイ子ども基金」(横浜市)が運営を支援しており、同法人理事長の藤掛洋子・横浜国立大教授は「様々な生きづらさを抱える子どもたちも、安心して過ごせる場所になれば」と期待する。

<エル・パライソ>
 所在地:福岡市早良区昭代2-2-28
 電話:050-3528-8258
 営業時間:月~土曜の午後3時~6時半


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10年ぶりに店を再開

 北九州市戸畑区には、2020年5月に10年ぶりに復活した駄菓子屋兼カフェ「いぬまる商店」がある。店主の犬丸優子さん(61)がコーヒーやゆず茶なども提供し、幅広い世代が集まる。

 前身は明治末期に和菓子店として創業した「犬丸商店」で、駄菓子屋に衣替えした店を犬丸さんの義父・政美さん(故人)が営んでいたが、10年に閉店した。

 犬丸さんは地域の人から「犬丸のおいちゃん(政美さん)によくしてもらった」とたびたび言われてきた。娘3人の子育てや義父母の介護が一段落し、店の再開を決めた。


いぬまる商店には1歳の”常連さん”もやって来る

 古い木造建物を改修した店舗では、土間に駄菓子を並べ、隣接する居間で飲食できるようにした。居間にはおもちゃや絵本も置き、幼い子を連れた親もくつろげる。2階の和室は、ヨガ教室や勉強スペースなどとして開放。犬丸さんは「色んな人がつながれる場所になればうれしい」と力を込める。

<いぬまる商店>
 所在地:北九州市戸畑区新川町6-8
 営業時間:平日の午後1~6時
 インスタグラム:@inumarushouten

商店街ににぎわいを

 福岡県糸島市の駄菓子屋「秘密じゃない基地”トムソー屋”」は、市内で学生寮の運営などを行う大堂良太さん(40)とデザイナーの鬼嶋幸治さん(47)が10月にオープンした。空き店舗が目立つ前原商店街の一角にあり、鬼嶋さんは「昔のようなにぎわいを取り戻したい」と意気込む。


トムソー屋に海賊船のような陳列台をデザインした鬼嶋さん

 「新スタイル駄菓子屋」と銘打って様々な工夫を施しており、駄菓子の陳列台は海賊船の形のデザイン。カウンターには白い紙を貼り、子どもが自由に落書きできる。


カウンターではお絵かきなどを自由に楽しめる

 地元の人が手作りのアクセサリーや雑貨を販売できるレンタル棚を備え、クレープ店の出張販売やけん玉大会を行っている。大堂さんは「子どもも大人もワクワクする場所にしたい」と話す。

<秘密じゃない基地“トムソー屋”>
 所在地:糸島市前原中央3-1-14
 営業時間:水~日曜の午後1~6時
 インスタグラム:@tomusoya_moyai



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