「非豚骨ラーメン」の店が拡大中 福岡の県民食に異変あり?
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- 高級魚でダシ
- 新店の7割が…
- 業界に活気!
福岡では、ラーメンと言えば豚骨。ところが近頃、しょうゆや塩など「非豚骨」の店が次々と開業している。県民のソウルフードに、一体何が起きているのか。
高級魚でダシ
非豚骨が注目されるきっかけとなった店の一つが、2020年1月にオープンした福岡市中央区渡辺通の「らぁ麺なお人」だ。店の一番人気は高級魚ノドグロでダシをとった「高級のどぐろらぁ麺」(1000円)で、濃厚な魚のうまみと香りが食欲をそそる。
店主の松崎七音(なおと)さん(37)は学生時代にダンサーを目指していたが、同市の老舗豚骨店で働くうちに「ラーメンの道に進みたい」と思うようになった。18年に上京し、有名店で修業しながら様々なジャンルのラーメンを食べ歩いて味を構想。「豚骨王国の福岡では豚骨ではない方がアピールできる」と考えたという。昨年10月には博多区に2号店「非豚骨 なお人」を出店し、「覚悟と自信を店名に込めました」とほほえむ。
新店の7割が…
タウン情報誌「シティ情報ふくおか」の調べでは、21年11月~22年10月に福岡市内に新規開店したラーメン店約50軒のうち非豚骨が7割を占め、豚骨は3割。非豚骨では、個性やこだわりを前面に出す店が目立つ。
糸島市の「おしのちいたま」は、同市で塩を製造・販売する「新三郎商店」が21年に開業した。名物の塩そば(1300円)は海水を炊くなどして作る塩を使い、マダイなどのダシで薄めに仕上げた。季節の野菜をたっぷり添え、社長の平川秀一さん(47)は「体に優しく、罪悪感なく食べられます」と力を込める。
那珂川市の予約制ラーメン店「御忍び麺処nakamuLab.(ナカムラボ)」の看板メニューは鶏白湯Soba(830円)で、スープをブレンダーで泡立てた斬新な1品だ。泡にするのはさっぱり味のスープを麺と絡みやすくするため。店主の中村聡志さん(36)は「将来の海外出店も見据え、宗教上の理由で食べられない人がいる豚骨は避けた」と説明する。
業界に活気!
非豚骨店の増加の理由について、ラーメン評論家の山路力也さんは「低価格、高品質の豚骨ラーメンがしのぎを削る福岡では豚骨での新規参入はハードルが高い上、非豚骨だと高めに価格設定しやすい」と指摘。また、長時間煮る豚骨スープはガス代や人件費が高くつくのが難点という。
SNSの普及で県民にも全国の多彩なラーメンが身近になっており、山路さんは「選択肢が増えるのは喜ばしいこと。福岡の『豚骨愛』は揺るがないが、非豚骨の増加が刺激となって、ラーメン界が活気づくのでは」と期待する。
豚骨にも”新風”
豚骨ラーメンでも、従来とは異なる味が登場している。
福岡市・中洲の「豚そば月や」が提供する「豚そば」は透き通った豚骨スープで、「クリア豚骨」と呼ばれる。低温で豚骨を煮出すなどして、濁らずすっきりとした味に仕上げた。周辺は繁華街で、「シメとして食べてもらいたい」と店長の冨永健太さん(35)らが考えた。
福岡市内に6店舗を展開する「海鳴(うなり)」は、豚骨スープにフレッシュバジルのペーストやオリーブオイルを合わせた「ラーメンジェノバ」を提供している。代表の大久保茂雄さんは「福岡の豚骨文化を継承しつつ、色んなアレンジも提案したい」と話す。
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