伝統に縛られない「伝統工芸品」 若い感性で自由にアレンジ!
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記事 INDEX
- ユニークな上野焼
- 新たな価値を創出
- コラボでポップに
伝統工芸というと「古めかしい」と思われがちだが、若い感性でアレンジした斬新な作品が福岡県内で次々に登場している。従来の用途にとらわれない発想も加わり、現代の暮らしに役立てられている。
ユニークな上野焼
福智町に伝わる国の伝統的工芸品「上野(あがの)焼」は400年を超える歴史があり、格調高い茶器が藩主らに愛用されたことでも知られる。その技を生かし、恐竜の植木鉢やオウムガイの酒器といったユニークな作品を制作しているのが、「守窯」の熊谷(くまがえ)真春さんだ。
守窯を主宰するのは父の守さん。幼い頃から作陶を身近で見てきた熊谷さんは、大学で金工などを学んだ後、2017年に父に弟子入りした。
上野焼は、薄づくりで軽く、釉薬(ゆうやく)の種類の多さが様々な色合いや質感を生む。大好きな恐竜や動物をモチーフにする際には、皮膚や毛などを表現するのに、上野焼ならではの釉薬の多彩さが役立つという。
SNSに投稿した作品には国内外から反応があり、幅広い年齢層が窯元を訪れるようになった。熊谷さんは「上野焼は格式が高いと思われがちだが、気軽に手に取ってもらいたい」とほほえむ。カップ類は5000~1万1000円。恐竜の鉢は2万2000円から。
上野焼など県内の国指定伝統的工芸品7品目の生産額は、12年は約84億円だったが、22年は43億円とほぼ半減した。従業員数も10年間で約4割減り、生産人口の減少と高齢化が課題となっている。
新たな価値を創出
県は19~21年度に新商品開発の支援事業を実施。これを活用して、八女市の商社「うなぎの寝床」などは伝統工芸を生かした「山」をテーマにした道具を共同開発した。「八女福島仏壇」の引き出しの装飾をモチーフにした「ヤマテーブル」(1万1550円)や、博多人形師が鬼頭の飾りを造形したテント固定具「オニペグ」(2本5500円)などで、福岡市・天神のアクロス福岡匠ギャラリーで販売。うなぎの寝床のバイヤー春口丞悟さんは「形や販路を変えて新たな価値を生み出し、伝統工芸の可能性を広げたい」と力を込める。
コラボでポップに
春日市の「後藤博多人形」は、九州産業大芸術学部の学生のデザインをもとにした博多人形「HAKATA DOLLS」を販売している。水玉模様の髪やポップな柄の着物など15種類がそろい、若者や外国人観光客にも好評だ。1980~2750円。
同社と学生のコラボレーションは10年ほど前からで、空港の土産店で1か月間に40体近く売れたこともあった。後藤達朗社長は「伝統に縛られず、突拍子もないデザインに驚かされた。若者が博多人形の歴史を知る機会にもなっている」と語る。
全国でセレクトショップを運営する「ビームス」は、久留米絣(かすり)を使ったブランド「CATHRI(カスリ)」を展開する。特徴的なデザインを生かしたスカートやジャケットなどがあり、5月31日~6月9日には福岡市の「ビームス福岡」で特設コーナーを設けて新作などを販売する。
新たな使い方を提案
県は22年度から、人が集まる施設の内装に伝統工芸を取り入れて、需要開拓や認知度の向上につなげる取り組みをしている。
福岡市中央区のホテル「ザ・リッツ・カールトン福岡」の壁を小石原焼の皿や博多織で装飾したり、同市博多区のオフィス「レイメイ藤井」の入り口に博多織と博多曲物をあしらったりする事例があり、県観光政策課の担当者は「現代の生活に合わせた今までにない使い方を提案することで、伝統工芸を未来に引き継いでいきたい」と語った。
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