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記事 INDEX
- まっすぐ伸びたコチョウラン
- スカビオサ「神様の贈り物」
- 多彩な”表情”の秋色アジサイ
新しい生活がスタートする季節。感謝や応援の思いを込めて、花を贈る人も多いだろう。福岡県は花の栽培が盛んで、ほかにない色や形が次々に生まれている。
まっすぐ伸びたコチョウラン
◆三坂園芸(糸島市)
2月中旬、糸島市のコチョウラン農園「三坂園芸」で、農園オリジナルの「宝船」がピンク色の花を咲かせていた。一般的なコチョウランは大輪の花が連なって茎が垂れ下がるが、「宝船」は、まっすぐ上に伸びた姿がユニークだ。
宝船を手がけたのは、農園代表の三坂広明さん。コチョウランは開店祝いやホテルなどの需要が多い一方、花が垂れるために鉢を置くのに広いスペースが必要で、家庭用に買う人は多くない。
「家庭で手軽に飾れる花が作れないか」と思っていた10年ほど前、苗の仕入れ先である台湾の農場を訪れた際に茎の強い品種を発見。約3年かけて日光の照度や湿度を調整して茎の強度をさらに高め、「門出を祝う花に」と、宝船の帆に見えるよう花や茎の形を整えた。高さ70~80センチほどで、正月や古希など節目のお祝いにも人気という。
三坂さんはほかにも、コチョウランには香りがないのは寂しいと考えて、ジャスミンのような芳香がする新品種を試作中で、3年以内の商品化を目指す。「コチョウランの花言葉は『幸せが飛んでくる』。卒業や入学など、新生活を始める人に寄り添う花になれば」と笑顔を見せた。
スカビオサ「神様の贈り物」
◆小山花園(嘉麻市)
嘉麻市の「小山花園」で、小山修一さんと妻のけいこさんが20年ほど前から生産しているのは「スカビオサ」。日本に分布する紫色の花「マツムシソウ」の仲間で、小山花園で栽培する約40種類は、すべて2人が交配を重ねて開発したオリジナル品種だ。
一般的なスカビオサは紫や青、ピンクなどだが、小山農園では黄色やグラデーションなど独自の色の花を育てる。10年以上前に突然変異で薄緑色の花が咲いたことがきっかけ。あまりの珍しさに「神様の贈り物」と感じ、試行錯誤しながら殖やして商品化したという。修一さんは「まだない色はたくさんあり、可能性は無限大。次は空色の品種を作りたい」と意気込む。
多彩な”表情”の秋色アジサイ
◆園木園 HANA TATSUJIN(久留米市)
久留米市の「園木園 HANA TATSUJIN」は、くすんだ色の「秋色アジサイ」を約30種栽培している。ほとんどが代表の園木正広さんと妻の美保さんが開発したオリジナル品種。紫に緑が混じる「アドミレーション」や、ピンクに紫や緑が入る「マザーラブ」など、大人にふさわしい落ち着いた色調が、母の日の贈り物にも喜ばれているそうだ。
単色のアジサイを、土壌の酸性度などを細かに調整して多様な色合いに変えている。一般的なアジサイに比べて手間がかかり、栽培期間も2か月以上長くなるという。
これまでに同園で開発したアジサイの品種は試作を含め約900にのぼる。正広さんは「きれいね、と喜んでもらえるのが生産の意欲」と語り、美保さんは「色の奥深さを楽しんで」と呼びかける。
福岡市は小中学校で「花育」
福岡は有数の花の産地で、2022年の県内の花き産出額は全国3位の185億円。一方、家計調査によると、福岡市の切り花への年間支出額は1世帯あたり5036円で、全国の都道府県庁所在地中43位と少ない。
将来の消費者となる世代に花に親しんでもらおうと、福岡市は、市立小中学校の子どもたちにフラワーアレンジメントなどを体験させる「花育」を実施している。今年度は計10校で延べ442人が学んだ。
市総務農林部政策企画課は「県産花の魅力に気づいてもらうとともに、心の成長にもつながれば」と期待する。
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