世代を超えて広がる人気! 手軽でおしゃれな現代の「盆栽」

多様化している「盆栽」

記事 INDEX

  • コーヒーを片手に鑑賞
  • 若い世代や海外も注目
  • アートとしての魅力も

 盆栽といえば、「高齢者の趣味」「手入れが大変」と縁遠く感じる人も多そうだ。だがこの頃では鑑賞しながら飲食できる店や、アート作品の制作など、新しい楽しみ方が広がっている。

コーヒーを片手に鑑賞

 ◆盆栽アトリエ「Scapes」(福岡市)
 福岡市博多区には、盆栽を眺めながらコーヒーやお酒を楽しめる盆栽アトリエ「Scapes(スケープス)」がある。店内には、風格ある姿の黒松、幹がねじれた真柏(しんぱく)(ヒノキ科)など約50鉢が並ぶ。鉢はステンレス素材で作ったオリジナルで、展示作品は1万円台後半から数十万円で販売もしている。


盆栽の魅力を語る浜地さん

 制作するのは代表の浜地周三さんで、会社員だった25歳の時、知人から盆栽をもらったことをきっかけに興味を持った。盆栽職人の友人に技術を教わり、「素晴らしい文化なのに知られていないのはもったいない」と2021年11月にカフェを併設したアトリエをオープンした。

 SNSで作品を発表しており、それを見て来店する若者も多い。友人と訪れた福岡市の会社員男性(23)は「すごくおしゃれ。盆栽のイメージが変わった」と驚いていた。


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若い世代や海外も注目

 ◆造園業「雄光苑」(長崎市)
 手乗りサイズの「ミニ盆栽」も人気だ。長崎市の造園業「雄光苑」は、「ツチンナカキ」のブランドでマルシェなどに出品し、3000~6000円で販売している。


小さなサイズの盆栽(ツチンナカキ提供)

 同社の植木職人の簗瀬旭さんが「庭をもつ家が少なくなる中、植木に関心を持つ人を増やしたい」と約3年前に事業をスタート。ミニ盆栽作りの体験会も開いており、「小さくても本格的」と若者にも好評という。簗瀬さんは「盆栽を育てることを通じて季節の移り変わりを感じてほしい」と勧める。

 日本盆栽協会によると、同会の会員は1980年頃は約2万3000人だったが、現在は約3000人にまで減少。ただ、新型コロナウイルス禍で一人でできる趣味として脚光を浴び、SNSを通じて若い世代に広まりつつある。国外でも人気は高く、同会にも米国や豪州、中国などから約60人が加入。担当者は「盆栽の楽しみ方が変化し、多様化している」と説明する。

アートとしての魅力も

 ◆3Ring DRY BONSAI FUKUOKA(福岡市)
 2023年7月にオープンした福岡市中央区の「3Ring DRY BONSAI FUKUOKA」は、枯れた盆栽を「ドライ盆栽」として生まれ変わらせている。

 ドライ盆栽とは、枯れた盆栽を厳選して乾燥、剪定(せんてい)し、着色したもの。同店では、松から作った顔料などで染めており、緑や赤、黄のほか、水色や紫といった意外な色も使う。


3Ringのドライ盆栽

 魅力の一つは水やりや手入れの必要がないことで、開店祝いなどでコチョウランの代わりに贈る人もいるそうだ。同店の担当者は「通常の盆栽は日本と異なる気候では育てるのが難しいこともあり、外国人客から喜ばれている」と話す。

 ◆小倉はりがね盆栽(北九州市)
 盆栽をモチーフにしたワイヤアートもある。「小倉はりがね盆栽」は、北九州市在住の江頭広祐さんが同市の自然と鉄鋼のイメージから着想を得て、約3年前に始めた。


小倉はりがね盆栽のワイヤアート(小倉はりがね盆栽提供)

 ワイヤはアルミ製、鉄製、ステンレス製を使い分け、細かい円を連ねて葉にしたり、ねじったワイヤの束で幹の力強さを表現したりしている。鉢の代わりにナットを使うこともある。

 大きなサイズの作品では長さ100メートル以上のワイヤを使用。江頭さんは「光の当て方によって色々な表情を見せてくれます」と魅力を語る。

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