「或る列車」運行10年に 九州の「食」を車内の料理で発信!

運行開始から10年を迎える「或る列車」
記事 INDEX
- 九州食材フルコース
- 豪華列車がモチーフ
- 博多―由布院を運行
金色で唐草模様の車体が特徴的なJR九州の観光列車「或(あ)る列車」が、8月で運行開始から10年を迎える。車内でスイーツを味わえる珍しい観光列車として走り出した後、九州・沖縄の食材を使ったフルコース料理を提供する列車に姿を変え、九州の「食」の魅力を発信している。
九州食材フルコース
6月上旬、博多駅(福岡市)に停車していた2両編成の「或る列車」がゆっくりとホームを離れ、走り始めた。テーブルを備えた客席には早速、長崎県産の新ジャガイモや鹿児島県産ウニなどで作った冷製スープが運ばれた。
佐賀県産の鶏肉の料理などが続き、デザートには、宮崎県産のマンゴーと沖縄県産パイナップルのスイーツが提供され、約3時間かけて終点の由布院駅(大分県由布市)に到着した。
豪華列車がモチーフ
「或る列車」は、明治時代に九州の鉄道会社が計画していたとされる豪華列車がモチーフで、2015年8月8日に運行を開始。車内に調理スペースを備え、週末を中心に長崎、大分県内で1日1往復し、オリジナルのスイーツを車内で提供していたが、客層を広げるため、21年に九州・沖縄の食材を使ったコース料理に変更した。
「或る列車」に食材を提供する各地の農家らにとっては新たな販路となっており、パエリア用のコメを生産する長崎県諫早市の農家(80)は「愛情を注いで育てたコメを多くの人に味わってもらえるのはうれしい」と話す。
博多―由布院を運行
メニューの刷新にあわせて運行ルートなども変更し、乗降客が多い博多―由布院駅を週末などに1日1往復するようにした。一連の見直しで、「夫婦の結婚記念日といった需要も取り込めるようになった」(鉄道事業本部)という。
通常料金は大人3万6000~4万8000円で、2024年度は約3000人が利用しており、香港や台湾から美食を求める訪日客の乗車も目立つようになった。
JR九州鉄道事業本部営業課の伊藤吉紀さんは「運行区間やメニュー構成などは変化したが、旬の食材を使った料理を堪能してもらうという基本理念は変えていない。今後も『極上の食・時・おもてなし』を提供したい」と意気込んでいる。